フィンランドでは2017年1月より、同国の社会保障研究所(Kela)によって、ユニバーサル・ベーシック・インカムの制度が導入された。これは2年間にわたって、国民の25歳から58歳までの失業者を対象に、政府が一人当たり560ユーロ(約7万4300円)を支払うというもの。ただ対象者は2000人で、無作為に選ばれた人たちであり、実際に求職しているかどうかなどの証明は必要とされていない。また、対象者が就職した場合にも引き続き支払いは続けられていた。
Kelaは政府に対し、運用の延期を見込んでさらなる資金提供を求めたが、却下された。政府はこれに代わる新たな社会保障制度を検討しており、そちらを優先したい考えだ。これに伴い来年1月で同制度は打ち切られる。
ベーシック・インカムのアイデアは、テスラやスペースXのイーロン・マスクCEOやノーベル賞受賞経験のある経済学者アンガス・ディートン氏ら著名な実業家らからも支持されていた。彼らは、政府が国民に無条件でお金を提供することでセーフティーネットとして機能すると主張していた。安定した仕事へ転職するための活動中も収入がある程度確保できるため、今後3分の1が機械化されるとみられる単純労働を主体として働く人たちの不安定さを解消するなど労働市場への対応力を高められると主張していた。
これに対し経済協力開発機構(OECD)や経済開発検討委員会(EDRC)の調査では、ベーシック・インカムよりも福祉給付を一本化したユニバーサル・クレジットの方がよいと指摘している。ベーシック・インカムではその原資をカバーするため所得税が30%以上アップし、所得格差が広がると予測がされているのに対し、ユニバーサル・クレジットでは格差が縮まると予想されている。またガーディアン紙では、現制度の代わりに、フィンランド政府は失業者に対し、3ヶ月で18時間以上の労働やそのための訓練を受けた者へ新たな援助をする制度を導入すると伝えている。
Kelaのオリ・カンガス教授は資金提供が打ち切られることを残念だと述べ、「結論を出すには2年間では短すぎる。信頼ある結果を手に入れるためにはさらなる時間とお金が必要だ。」と話している。
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