インドネシアに生息する野生のマカクザルが、自然写真家のカメラで自撮りした写真の著作権が争われた米国の裁判の控訴審で、第9巡回連邦控訴裁判所は23日、サルの著作権を否定した一審判決を支持する判断を下した。多くの米メディアが報じている。
2011年、インドネシアに住む当時7歳だったサルのナルトは、同国を訪れて活動していた写真家、デビッド・ジョンソン・スレイター氏のカメラを使い、自分の写真を何枚か撮影した。スレイター氏は、サルの自撮り写真を自費出版した写真集に収めた。
米国の動物の権利運動団体である「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」は2015年、ナルトに代わりスレイター氏と自費出版会社を相手取って訴訟を提起した。...
全部読む
2011年、インドネシアに住む当時7歳だったサルのナルトは、同国を訪れて活動していた写真家、デビッド・ジョンソン・スレイター氏のカメラを使い、自分の写真を何枚か撮影した。スレイター氏は、サルの自撮り写真を自費出版した写真集に収めた。
米国の動物の権利運動団体である「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」は2015年、ナルトに代わりスレイター氏と自費出版会社を相手取って訴訟を提起した。PETAは、ナルトが撮影した写真の出版・販売は、著作権法に基づくナルトの権利を侵害していると主張したが、被告側は、サルは著作権を持つことはできないと反論した。
一審の米連邦地裁のウィリアム・オリック判事は2016年1月の判決で、被告側の主張を認め、議会と大統領は、動物にも人間と同程度にまで法の保護を拡大することができるが、著作権法についてはそのような証拠はないとして、基本的に動物は著作権侵害訴訟を提起できないとの判断を示した。
PETAはこの決定を不服として控訴していたが、このほど第9巡回控訴裁判所は、カーロス・ビー裁判長ら3人の裁判官全員一致の判断で、著作権侵害は人間だけが主張できるものであり、サルに対する著作権法上の保護の根拠なしとして一審判決を支持し、控訴を棄却した。PETAの弁護士は控訴審判断の内容を精査しているが、上訴するか否かについては、未だ結論を出していないとしている。
これに先立ち、PETAとスレイター氏との間には昨年9月に示談が成立していた。PETAのウェブサイトで公表されている共同声明によれば、スレイター氏は、サルの自撮り写真の使用または販売から得られる将来の収入の25%を、インドネシアのマカクザルの生息地保護のための慈善活動に寄付することに同意したという。
示談が成立したため、原告・被告双方が訴訟を終結しようとしたが、控訴裁判所は、判例法が形成されつつある分野であり、自らの決定が今後の下級審の判断の指針にもなるとしてこれを拒否し、今回の判断に至ったものである。
閉じる