金正恩(キム・ジョンウン)委員長の電撃訪中で習近平(シー・チンピン)国家主席の後ろ盾を得て、4月の南北朝鮮首脳会談、5月の米朝首脳会談と、金委員長の外交成果が着々と表れている。ただ、英国メディアの報道では、昨秋以降の中国からの石油輸入量が9割余りも急減したこと等によって、北朝鮮として下手に出ざるを得なくなったと分析されている。一方、ロシアメディアによると、金委員長が習主席の手前、朝鮮半島の非核化を目指すとの発言をせざるを得なかったが、北朝鮮メディアは国内向けプロパガンダ上、この事態には一切触れていないという。
3月30日付英
『ザ・テレグラフ』紙:「中国の北朝鮮向け石油輸出大幅削減が北朝鮮の方針変更をもたらす」
英法人アバディーン・スタンダード・インベストメンツ(ASI、国際金融事業会社)が中国税関資料を分析したところ、直近5ヵ月間の北朝鮮向け石油輸出量は、年換算ベースで前年比▼96.3%も落ち込んでいるという。
また、鉄鋼製品・自動車の輸出量も大幅減少しているという。...
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3月30日付英
『ザ・テレグラフ』紙:「中国の北朝鮮向け石油輸出大幅削減が北朝鮮の方針変更をもたらす」
英法人アバディーン・スタンダード・インベストメンツ(ASI、国際金融事業会社)が中国税関資料を分析したところ、直近5ヵ月間の北朝鮮向け石油輸出量は、年換算ベースで前年比▼96.3%も落ち込んでいるという。
また、鉄鋼製品・自動車の輸出量も大幅減少しているという。
ASIのアレックス・ウォルフ主任エコノミストは、これらの異常事態によって“金正恩委員長をして中国接近せしめる”結果をもたらしたと分析している。
同氏によれば、北朝鮮による洋上での石油背取り(密輸)が頻繁に行われたが、これだけでは上記の輸入量大幅落ち込みを全くカバーできないとする。
同氏はまた、習近平国家主席のしたたかな戦略で、経済的な猛圧力によって、金委員長に北朝鮮の政治不安や金政権瓦解の恐れを煽ったものと考えられるという。
一方、米法人パンテオン・マクロエコノミクス(経済リサーチ・コンサルティング会社)のフレヤ・ビーミッシュ主任エコノミスト(アジア担当)は、習国家主席の戦略が奏功したもので、多くの北朝鮮難民が中国流入するような北朝鮮崩壊という事態は避け、しかし、ぎりぎりのところで金委員長をして中国を頼らせるように仕向けることに成功したと評価している。
同氏はまた、金委員長としては、一党独裁は変えず、改革開放を成し遂げた中国共産党の政策を見習いたいと考えているとも言及した。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「北朝鮮メディア、金委員長の朝鮮半島非核化目標発言を報道せず」
北朝鮮国営『朝鮮中央通信』は、金委員長が習国家主席と会談した際に言及した、朝鮮半島非核化を目指すとの発言を一切報道していない。
金委員長の同発言は、朝鮮半島非核化を標榜する習国家主席と会談するに当り、避けて通れない事態であったはずであり、その言及がなくば、習主席は会談に応じなかったであろう。
更に同メディアは、北朝鮮の核兵器を廃棄する可能性についての金委員長の発言も報じなかった。
なお、トランプ大統領は、5月の金委員長との初会談に期待しているとしながらも、(事態改善がみられない限り)北朝鮮に対する現行の厳しい制裁及び圧力は継続されるとツイートしている。
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