漁業は、人間が42,000年前から行っているものだが、世界中でいつ、どこでどの程度行われているのか、その実態が把握されていなかった。しかし今回、23日米「サイエンス」誌で発表された衛星データに基づく新しい地図によって、世界規模での漁獲活動の実態が把握された。
今回の結果を得るために、NGO(Global Fishing Watch、National Geographic Society、SkyTruth)や大学(米国のカリフォルニアとスタンフォード、カナダのダルハウジー)とGoogleに所属する研究者達が、 2012年から2016年にかけて、船舶の自動識別システム(AIS)からの220億件の通信データを回収した。そこから、70,000隻の漁業船舶の船の大きさやパワー、行動(漁獲や航行)、漁獲の場所、時間と方法を確認した。...
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今回の結果を得るために、NGO(Global Fishing Watch、National Geographic Society、SkyTruth)や大学(米国のカリフォルニアとスタンフォード、カナダのダルハウジー)とGoogleに所属する研究者達が、 2012年から2016年にかけて、船舶の自動識別システム(AIS)からの220億件の通信データを回収した。そこから、70,000隻の漁業船舶の船の大きさやパワー、行動(漁獲や航行)、漁獲の場所、時間と方法を確認した。 今回のデータ収集は、世界中の36メートル以上の船舶の4分の3以上をカバーしていると見られている。そして分析の結果、漁業船舶は2016年には世界の海の55%、すなわち2億km2で漁獲活動を行っていることが分かった。農業面積、5,000万km2の4倍にあたる。
収集されたデータには、自動識別システムを使用している船舶の割合が少ない排他的経済水域(EEZ)や衛星通信圏外水域が含まれていないため、実際の漁獲総面積は地球の海面の73%まで上がると憶測されている。
活動量が最も多い地域は、北東大西洋(ヨーロッパ)と北西太平洋(中国、日本、ロシア)、そして南米と西アフリカの一部の地域。 ほとんどの国は自国のEEZ内で主に漁獲活動を行っているが、中国、スペイン、台湾、日本、韓国は漁獲の85%を公海で行っている。
また今回、漁業活動は、経済的および環境的条件よりも、文化的イベントや政治的決定の影響を強く受けていることが分かった。北半球では週末やクリスマス休暇中に、アジアでは、中国での毎年3か月ほどの全国的な漁獲禁止期間中に、漁獲活動が最も下がる。
グローバル・フィッシング・ウォッチの研究開発担当ディレクターであり、今回の研究の主任執筆者であるDavid Kroodsma氏は、「政策立案者を含む誰もがこのデータをダウンロードできるようにすることで、商業漁業の透明性を高め、持続可能なマネジメントの機会を高めることを目指している」と述べている。
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