しかし、世界では水不足が広がっており、現在南アフリカの約400万人が住むケープタウンでも、干ばつによる水不足が深刻化している。「100年に1度」の危機的状況とされ、6月上旬までに貯水池が枯渇する恐れが高まっている。水道の水が使えなくなる「デイゼロ(Day Zero)」の到来を少しでも遅らせるために、現在住民の水道使用量は一日一人50リットルに制限されている。これは平均的な日本人が使う量の約6分の1に相当する。
しかしこのような「水の危機」は世界的規模では、数十年前から続けて起こっている。 FAO(国連食糧農業機関)の最新データによると、2014年時点で、南アフリカ、キプロス、モロッコなど、世界の45カ国は、水不足の状況にあり、そのうちアルジェリア、イスラエル、またはカタールなどの29ヵ国は、深刻な水不足にある。また専門家達は、インドのガンジス川流域の一部、南スペイン、イタリアまたはカルフォルニアのセントラル・バレーの帯水層が、数十年以内に、枯渇することを懸念している。 近いうちに北米、南米、オーストラリア、アジアに至る数々の都市でも、深刻な飲料水不足に陥る危険が高まっていると予測されている。過剰な開発と人口増加、それに気候変動の影響で、水の利用と供給のバランスが崩れていることが背景にある。
国連によると、人口増加、都市化と工業化ため、1964年から2014年の間に世界の年間淡水消費量はすでに倍増しているが、2030年までに都市部の需要がさらに50%増加するとされている。カッセル大学(ドイツ)の研究者達の研究によると、その時点で、482の大都市のうち、ロサンゼルス、ダルエスサラーム、サンディエゴ、ポルトアレグレなどを含む4分の1を超える412の大都市では、もはや住民の水の需要に応えられなくなるという。
世界経済フォーラムでは、「水の危機」を世界にとって最も深刻な脅威のトップ5のうちの1つに毎年挙げている。このまま行けば、水の危機が世界的に深刻なることは避けられないのだろうか。
しかし、例えば農業での水の使い方を変えていくことで、水の供給不足を緩和し、何百万人もの人々を水不足から救えることから、国連は2015年に、「世界の水の危機は資源の利用可能性の危機よりも、むしろ管理の危機である」と指摘している。
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