冬の中国の風物詩は、何と言ってもスモッグである。鉄鋼生産・化学工場の煤煙、車の排気ガスは一年中としても、極寒の都市では各家庭が安価な石炭ストーブで一斉に暖を取るため、高層ビルは霞むし、人々はとても屋外をマスクなしで歩けない程である。そこで中国習近平(シー・チンピン)政権としても、国連気候変動対策を謳ったパリ協定に率先して取り組むとしている手前、地元の大気汚染を何とか改善するべく、工場の生産規制や車の市街乗り入れ制限はもとより、各家庭での天然ガス使用への転換について大号令を掛けてきた。その成果もあって、2017年通年の主要都市における大気汚染が大幅に改善されたと報告されている。
1月18日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「中国当局、2017年の大気汚染は“改善”と発表」
中国の環境保護部(省に相当)は1月18日、以前は“世紀末的大気汚染”と揶揄されていたが、2017年通年で中国国内の大気汚染が大幅に改善したと発表した。
同部のデータによると、国内338都市のPM 2.5(微小粒子状物質)の平均濃度が、2016年比▼6.5%減の1立方メーター当り43マイクログラムとなったとする。
特に北京市においては、煤煙を発する工場群を郊外に移設させ、また、300万世帯以上に石炭暖房から天然ガス暖房に転換させ、厳しい大気汚染対策を実行したという。
ただ、環境問題専門家によると、中央・地方政府のかかる対策がいつまで持続されるかという点と、直近数ヵ月の冬の気候がスモッグを吹き飛ばす天気に恵まれていたお蔭でもあるとする。現に、1月18日晩から北京市街や中国北部はまた深いスモッグに覆われてしまっている。
なお、世界保健機関(WHO)は、24時間平均最大25マイクログラムを基本指針としている。
同日付香港
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』(
『ロイター通信』配信):「環境保護部、中国国内の大気汚染ワースト10市のうち6市は北部の河北省」
1月18日に環境保護部が発表したデータによると、2017年における大気汚染ワースト10市のうち6市が河北省(ハーベイ)であったという。
それらは唐山(タンシャン)・邯鄲(ハンダン)・邢台(シンタイ)・保定(パオディン)・衡水(ホンシュイ)・石家荘(シージャーズォアン)である。
河北省は鉄鋼生産量が国内最大であるが、冬期における大気汚染減少対策のため、6ヵ月間に限り生産調整と家庭における石炭暖房の制約を実施しているが、中国全体で比較するとまだ不十分とみられる。
2017年の河北省のPM 2.5の平均濃度は、2016年比▼7.1%減少したが、依然65マイクログラムであった。同省は、2020年までに更に14%減少させる目標を立てている。
河北省環境局の高建明(ガオ・チャンミン)局長は今年初め、2018年に対策を徹底し、石家荘・衡水・唐山の3市を国内ワースト10市から外すべく努めると語った。
なお、環境保護部のデータによると、2017年の国内338都市のPM 2.5通年平均濃度は43マイクログラムと、前年比▼6.5%下がったとしているが、WHOの1年平均値は10マイクログラムを基本指針としている。
(編注;1年平均濃度は日米が15マイクログラム、欧州は25マイクログラム以下を目標としている。)
一方、同日付米
『ロイター通信米国版』:「冬場の燃料需給ギャップを埋めるため中国の天然ガス供給量が直近4年で最多」
大気汚染対策のため、中国政府が進める石炭暖房から天然ガス暖房への転換政策によって、昨年12月の天然ガス供給量が2014年以来最大となった。
中国国家統計局が1月18日に明らかにしたところによると、ガス会社の昨年12月の供給量は136億立方メーターと前月比+10億立方メーター増、そして、2017年通年でも前年比+8.5%増の1,470億立方メーターとなったという。
中国政府は昨年、北部の28都市における数百万世帯の暖房用燃料を石炭から天然ガスに変更するよう命令を出している。
その結果、政府の影響力の及ばない液化天然ガスの市場価格が、昨年12月では1トン当たり1万人民元(1,554ドル、約17万4千円)まで上昇し、記録を更新した。
その後、国内生産増と記録的な輸入量確保のため、同市場価格は40%も下落している。
なお、中国石油天然気集団公司の幹部は、天然ガス供給量の確保ができ、かつ春節(編注;旧正月、今年は2月16日)にかけて事業活動が減速するため、同市場価格は安定してこよう、とコメントした。
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