トランプ大統領は昨年4月、内務省に対し、メキシコ湾の他に北極海や大西洋での石油・ガス鉱区のリース入札を検討するよう命じる大統領令を発していたが、今回の提案では、対象地域が大幅に拡大された。ライアン・ジンキ(Ryan Zinke)内務長官が4日に公表した本案は、2019年からの5年計画で、米国の沿岸水域の90%強において47件の鉱業権入札を提案するものであり、太平洋のカリフォルニア州沿岸や、大西洋のメイン州沿岸を含む東西両岸とアラスカ地域に及んでいる。
オバマ政権時代の計画では、メキシコ湾中央部・西部の10鉱区とアラスカの1鉱区のみを認め、それ以外を対象から除外していたので、米国の沿岸水域の僅か6%で掘削を認めるものだった。本案はこれを覆す前例のない規模のものになる。ジンキ長官は本案の目標につき、世界で「最強のエネルギー超大国になること」と述べた。
本案に対しては、原油流出による生態系への影響等、環境破壊につながると主張してきた環境保護活動家や、観光業界、そして一部の共和党議員等から、直ちに反対の声が上がった。環境保護団体は、掘削は沿岸地域の社会とその経済活動、気候等に大きな脅威をもたらすものであり、対象地域の拡大は、非常に過激で無茶を通り越したものと厳しく批判している。また共和党のリック・スコット(Rick Scott)フロリダ州知事は、採掘は同州の自然資源を脅かすものであり、掘削活動に待ったをかけるために戦うと語った。
ジンキ内務長官は、本案はプロセスの開始として、スコット知事ら州当局者の意見も踏まえて計画を進めると説明した。今後約1年のパブリック・コメントや改定の期間があり、その間に掘削地域が変更される可能性がある。またオバマ政権による北極圏や一部の大西洋地域での掘削禁止を覆す内容であるため、訴訟に持ち込まれることも考えられる。
サウジ主導の石油輸出国機構(OPEC)が2015年に価格競争を仕掛けて以来、米国の石油業界は減産を余儀なくされたが、2016年9月以降、テキサス州のシェールオイルの生産拡大にけん引され、新技術の開発もあって大きく回復している。トランプ政権の規制緩和も追い風となると思われ、今年中にもロシアやサウジを抜いて、世界一になる可能性もあると予測されている。
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