ニューヨーク本拠の、世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社Eurasia Group(EG、注1後記)が、恒例の新年10大リスクを発表した。それによると、保護主義政策を標榜する米国に代わって、中国が世界金融・経済界を中国式で牛耳ることになり、2008年の世界金融危機以来の金融不安が広がる恐れがある等、2018年は地政学的リスクが立ちはだかることになると予想した。
1月2日付米
『CBSニュース』:「EG発表の2018年地政学的リスクで中国問題が最大のリスクに」
米コンサルティング会社EGがこの程発表した2018年10大リスクによると、米国第一主義という保護主義を掲げる米国に代わって、中国が世界経済を牽引することになった場合、それが今年の最大のリスクだと評価している。
EG代表のイアン・ブレマー氏は、EG設立以来20年、毎年世界の環境は浮き沈みがあるが、その中でも2018年は、2008年の世界金融危機に匹敵する程予測が難しいリスクが立ちはだかる年だと言えると解説した。...
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1月2日付米
『CBSニュース』:「EG発表の2018年地政学的リスクで中国問題が最大のリスクに」
米コンサルティング会社EGがこの程発表した2018年10大リスクによると、米国第一主義という保護主義を掲げる米国に代わって、中国が世界経済を牽引することになった場合、それが今年の最大のリスクだと評価している。
EG代表のイアン・ブレマー氏は、EG設立以来20年、毎年世界の環境は浮き沈みがあるが、その中でも2018年は、2008年の世界金融危機に匹敵する程予測が難しいリスクが立ちはだかる年だと言えると解説した。
中でも中国が、自国方式で世界金融・経済界を席巻することになるとみられることや、北朝鮮問題、そして科学技術の冷戦等が今年の地政学的リスクとなるとみられるとした。
ブレマー氏は、米中の世界に与える影響・統率力についての例を挙げると、パキスタン問題がある。すなわち、トランプ大統領は昨日(1月1日)、パキスタンに多額の支援をしたのに、同国は米国の意思に反して依然テロリスト・グループ(タリバン等)を支援しているとツイートした。しかし、中国は既にパキスタンに巨額の経済的支援を行っており、盤石な同盟関係を築いてしまっていると指摘した。
更に同氏は、科学技術分野における米中冷戦について触れ、米国では政府は特にAI(人工知能)に投資せず、ただ、私企業のみが技術革新に注力している。しかし、中国は官民挙げて最先端技術の開発に取り組んでおり、これが更に米中間貿易不均衡問題を増幅しかねないとする。
なお、EGが掲げる10大リスクは以下のとおり;
① 中国による世界金融・経済界席巻
② 偶発的事態(北朝鮮、シリア問題等)
③ 世界的技術革新に関わる米中間冷戦
④ メキシコ(今年の大統領選の行方)
⑤ 米イラン関係(イラン核合意をめぐる今後の展開)
⑥ 国際機関の風化(国連、世界貿易機関等)
⑦ 保護貿易主義の台頭
⑧ 英国(欧州連合離脱問題)
⑨ 南・東南アジア諸国の政治的立ち位置(米国、中国どちら寄りか等)
⑩ アフリカの安全保障
1月3日付豪州『キャンベラ・タイムズ』紙:「EG、2018年の世界は“深刻な不測のリスク”に曝されていると発表」
中国の台頭、世界的技術革新の冷戦の他、EGが2018年の10大リスクとして挙げている主なリスクは以下のとおり;
●判断違い;サイバーテロ、北朝鮮、シリア、ロシア、国際テロ等への見込み違いによって深刻な国際的対立が引き起こされるリスク
●イラン;トランプ大統領の主張が通り、今年イラン核合意が立ちいかなくなった場合、中東が更に不安定になるリスク
●保護貿易主義;自国第一主義の台頭で、為政者が増々重商主義(注2後記)的政策実行で国際間対立が深まるリスク
(注1)EG:各国の政治情勢や地政学的リスクがビジネスに与える影響について分析し、顧客向けに定期的に情報提供するコンサルティング会社。1998年設立で、毎年1月、その年の世界10大リスクを発表。
(注2)重商主義:貿易などを通じて貴金属や貨幣を蓄積することにより、国富を増すことを目指す経済思想や経済政策の総称。16世紀半ばから18世紀にかけて、西欧で絶対君主制を標榜する諸国家がとった政策。なお、18世紀後半の産業革命後に起こった資本主義に取って代わられる。
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