中米パナマは今年6月、中華民国時代から107年続いてきた台湾と断交し、中国との国交に鞍替えした。近年でも、2003年のパナマ・台湾間自由貿易協定締結、2014年のフアン・カルロス・バレーラ大統領の就任式への馬英九(マー・インチウ)総統(当時)出席、2016年のパナマ運河拡張工事竣工式への蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の列席と、両国間の蜜月関係は続いていたが、パナマ側が急激に膨張する中国マネーの威力に屈したとみられる。そして、国交締結以降初めて訪中したバレーラ大統領を、習近平(シー・チンピン)国家主席他が熱烈歓迎した上、貿易や投資などで更にパナマ支援を約束した。現在台湾が国交を結んでいるのは僅か二十数ヵ国(主に大洋州・中南米・アフリカ大陸の小国)であるが、その中で最も経済力のあるパナマが中国の軍門に下ったことから、台湾から中国へ鞍替えする国が増々増えることが予想される。
11月17日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、台湾と断交したパナマに必要な限り援助すると表明」
中国外交部の趙(チャオ)中南米担当局長は11月17日、パナマのフアン・カルロス・バレーラ大統領と習近平国家主席が、両国間の自由貿易協定前提の覚書を含めて19の協定に署名した旨公表した。
バレーラ大統領は、今年6月に台湾と断交して以来初めて、11月16日より訪中している。...
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11月17日付米
『ロイター通信米国版』:「中国、台湾と断交したパナマに必要な限り援助すると表明」
中国外交部の趙(チャオ)中南米担当局長は11月17日、パナマのフアン・カルロス・バレーラ大統領と習近平国家主席が、両国間の自由貿易協定前提の覚書を含めて19の協定に署名した旨公表した。
バレーラ大統領は、今年6月に台湾と断交して以来初めて、11月16日より訪中している。この訪問を受けて習主席は、バレーラ大統領が両国関係を発展させていくとの強い意志表明を評価していると語った。
パナマが断行を発表した当時、台湾政府は激怒したものの、“経済力にものを言わせての外交競争”に加わるつもりはないと表明していた。
ただ、バレーラ大統領は9月、中国国営テレビのインタビューに対し、台湾と断交し中国と国交したのは“経済支援の差”などではないと述べていた。
なお、中国港湾工程有限公司(国営の中国交通建設集団有限公司の子会社)らの企業グループが先月、1億6,500万ドル(約187億円)をかけてパナマに客船ターミナルを建設する工事に着手しているが、パナマとの国交開始以来初の大型プロジェクトである。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「パナマの大統領、台湾との断交後初の訪中」
バレーラ大統領は11月16日、北京に初めて開設されたパナマ大使館開館式に出席した。翌日には、習国家主席ら首脳と会談した。
同大統領は、パナマは「一つの中国」原則を改めて確認するとともに、これを契機に両国間の経済連携が増々強化されることを望むと語った。
なお、中国はパナマ運河の利用において、米国に次いで世界で2番目に多い国となっているだけでなく、中国企業集団が既に同運河の運営に携わっている。
同日付フランス
『フランス24』オンラインニュース(
『AFP通信』配信):「パナマ、台湾と断交して中国との経済連携を優先」
バレーラ大統領と習国家主席は、19の経済連携の協定を締結しただけでなく、農業、民間航空、海上輸送における協力に加えて、中国人旅行客団体の受け入れについても合意した。
なお、パナマが台湾と断交したことから、台湾が国交を結んでいる国は僅か二十ヵ国になっている。
11月18日付中国
『チャイナ・デイリィ』:「中国とパナマの関係は新たな段階に」
習国家主席はバレーラ大統領に、今回の諸協定締結は世界へ重要なメッセージとなる、すなわち、中国・パナマ両国の国交開始が数十年遅れてしまったが、これから両国間の関係は新たなステージに発展していくからであると伝えた。
同主席はまた、バレーラ大統領がパナマの大統領として訪中した初の大統領であるだけでなく、先月開催の中国共産党第十九次全国代表大会(習主席の第2期確定)後、中南米からの最初の訪中首脳だとも語った。
一方、バレーラ大統領は習主席に、最初に中国人がパナマに来たのは160年前で、同国の鉄道建設に関わり、また、その後のパナマ運河建設事業にも参画してくれており、更に、パナマ人の約10%が中国系であるとも述べた。
なお、外交部の趙中南米局長は公式会見で、両首脳が「一つの中国」原則に則って両国関係を発展させることを確認したとした上で、バレーラ大統領も、同原則を厳格に守り、これに反するいかなる行動にも反対していくと約束したことを明らかにした。
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