国連の安全保障理事会は16日、シリアのアサド政権の化学兵器使用疑惑を調査する国連と化学兵器禁止機関(OPCW)の合同調査チームの任期を1年延長する米国起草の決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使したため否決された。中国は棄権している。
内戦下にあるシリア北西部のハーンシャイフーンで4月4日、約100人の住民が犠牲となった攻撃に猛毒のサリンが使われた等の疑惑が浮上し、国連とOPCWのチームが調査をしていた。米国はこれを受けてシリアの空軍基地にミサイル攻撃を行っている。
安保理で決議案が採択されるためには、9票の賛成を必要とする。米国起草の任期延長の決議案は、ロシアが拒否権を行使したため、廃案となった。ロシアのネベンジャ国連大使は、米国案はバランスを欠くと批判した。...
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内戦下にあるシリア北西部のハーンシャイフーンで4月4日、約100人の住民が犠牲となった攻撃に猛毒のサリンが使われた等の疑惑が浮上し、国連とOPCWのチームが調査をしていた。米国はこれを受けてシリアの空軍基地にミサイル攻撃を行っている。
安保理で決議案が採択されるためには、9票の賛成を必要とする。米国起草の任期延長の決議案は、ロシアが拒否権を行使したため、廃案となった。ロシアのネベンジャ国連大使は、米国案はバランスを欠くと批判した。投票結果は、賛成が11票、ロシアとボリビアが反対し、中国とエジプトが棄権している。合同調査チームの任期は17日で切れる。
欧米が主導するシリア関連の決議案にロシアが拒否権を行使するのは、これで10回目となる。シリアに関しては、合同調査チームがまだ調べていない化学兵器の使用疑惑があるが、今回の任期延長の失敗で、シリアの後ろ盾となっているロシアと、これを非難する米国との対立が改めて浮き彫りとなり、安保理が拒否権により機能しないという弱点が再度露呈した。米ロ両国は投票後、激しい非難の応酬をしている。
延長を巡る協議は今後も続けられる見込みである。ヘイリー米国連大使は「再度しなければならないなら、行う。」と述べた。米国は同種の任期延長の決議案を10月24日にも提出したが、その際にもロシアが2日後に予定されていた合同チームの調査結果の開示を待ちたいとして拒否権を行使し、廃案となっていた。
米国案の否決を受けて、非常任理事国の日本が、任期を1カ月延長する決議案を回付した。17日に委員会で議論される予定だが、いつ採決するのか等については明らかになっていない。
ロシアは2015年に合同調査チームの設立に同意したが、その調査結果については、常に疑問視してきた。調査チームはまた、シリア政府が塩素を数回兵器に使ったと結論づけている。合同調査チームの手法に不満であるロシアは、今回対案となる決議案を用意したが、これも賛成4票、反対7票、棄権4票で否決された。
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