世界における軍事力は、米軍が長らく他を引き離している。しかし、習近平(シー・チンピン)国家主席の強力指導の下、中国の躍進が目覚ましい。米軍事力評価機関グローバル・ファイアパワーの2017年報告では、中国の軍事力はロシアの後塵を拝して3位となっているが、差は僅かで2位になるのは時間の問題という。特に、中国は、国産空母生産はもとより、潜水艦建造の上でも数を頼みにしている。そこで米国としても、ドナルド・トランプ大統領の軍事力増強の掛け声の下、海中における覇権も維持すべく、最新鋭ステルス潜水艦を建造している。
10月26日付
『CNNニュース』:「米海軍、“最新鋭の”ステルス潜水艦を建造」
現代の海中戦略において、如何に気づかれずに偵察、あるいは高速攻撃を仕掛けられるかが重要になっている。そこで米海軍は、最近になって海中における軍事力を増強してきたいくつかの競争国との差を広げるべく、最新鋭のステルス型原子力潜水艦を建造中である。
建造されているのはバージニア級原子力潜水艦(注後記)“サウス・ダコタ”で、建造コスト約27億ドル(約3,050億円)、2018年8月就役予定である。...
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10月26日付
『CNNニュース』:「米海軍、“最新鋭の”ステルス潜水艦を建造」
現代の海中戦略において、如何に気づかれずに偵察、あるいは高速攻撃を仕掛けられるかが重要になっている。そこで米海軍は、最近になって海中における軍事力を増強してきたいくつかの競争国との差を広げるべく、最新鋭のステルス型原子力潜水艦を建造中である。
建造されているのはバージニア級原子力潜水艦(注後記)“サウス・ダコタ”で、建造コスト約27億ドル(約3,050億円)、2018年8月就役予定である。
米海軍は目下70隻の潜水艦を保有していて、弾道ミサイル潜水艦、攻撃型潜水艦、巡航ミサイル潜水艦に分かれる。そして、“サウス・ダコタ”を含めて、バージニア級攻撃型潜水艦を17隻保有することになる。
米下院外交委員会の海軍戦力・戦略小委員会の前委員長であったランディ・フォーブス氏は、現代の潜水艦戦略において、ステルス性能が最重要事項のひとつで、バージニア級攻撃型潜水艦は群を抜いていると語った。
また、米海軍によれば、目下建造計画段階の“バージニア級ミサイル追加搭載型原子力潜水艦”2隻は、トマホーク巡航ミサイル(対地及び対水上攻撃)を6基搭載するもので、更に攻撃能力が増強されるという。そして、これらが2024~2025年に就役する頃には、退役を迎える攻撃型潜水艦、弾道ミサイル潜水艦に取って代わられるとする。
更に、フォーブス氏によれば、中ロ両国の潜水艦増強計画は目を見張るものがあり、そこで“サウス・ダコタ”建造・就役も必須になるとする。ロシアは、冷戦時代に現在保有する潜水艦の約80%を建造済みのため、数を増やすより、現有潜水艦に最新鋭技術を搭載させることを目指している。一方中国は、技術革新よりまずディーゼル型潜水艦保有数の大幅増加を狙っている。
米太平洋軍のハリー・ハリス司令官は、世界中にある400隻の潜水艦のうち、約230隻が現在インド洋・アジア太平洋に潜伏しており、そのうちの約160隻が、中国・北朝鮮・ロシアの潜水艦だと述べている。
そこでフォーブス氏は、南シナ海で一方的に主権を主張する中国を含めて、“グレーゾーン(あいまいな地域)”において活動を活発化している中ロに対抗すべく、最新鋭技術の戦力を投入していく必要があるとする。
なお、米海軍の長期戦略では、今後30隻のバージニア級攻撃型原子力潜水艦を建造し、退役する14隻のオハイオ級(弾道ミサイル潜水艦)及び12隻のコロンビア級(オハイオ級の後継艦)に取って代わるとする。
ただ、軍事専門家によれば、米海軍が策定した2017年度版30ヵ年計画に基づき、2029年までに41隻の攻撃型潜水艦を建造するとしているが、海中における覇権を維持するために必要な攻撃型潜水艦の保有数は65~70隻とみられ、全く足りないとしている。
そこでフォーブス氏は、数が足りないのであれば、これまでの戦略(1対1の戦闘)を変更して、空母型の潜水艦の開発・建造も必要となろうとコメントしている。
(注)バージニア級原子力潜水艦:米海軍が現在調達中の攻撃型原子力潜水艦。艦名は、12番艦を除いて米国の州名がつけられている。2004年10月に1番艦が就役。
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