英国と欧州連合(EU)側は目下、2019年3月末発効するBREXIT(英国のEU離脱)について、スムーズな移行を目指して鋭意交渉を続けている。しかし、EU側の本音として、英国がBREXITに関わる補償をいくら払うのか、また、現在は行き来が自由なアイルランドと北アイルランド(注後記)国境問題をどうするのかが大きな課題となっているとする。
10月20日付米
『AP通信』:「EU代表、行き詰ったBREXIT関連協議打開策に躍起」
英国とEU加盟27ヵ国代表は10月20日、ブリュッセルで行われた2日間の協議で大きな進展がみられなかったことを認めた。特に、BREXITの代償として、英国側がいくら補償するかで物別れに終わったという。
EUのドナルド・トゥスク議長(ポーランド出身の政治家)は、交渉が暗礁に乗り上げたとの報道は大袈裟だと語ったが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領などは、交渉はまだ半分も進んでいないと吐露している。...
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10月20日付米
『AP通信』:「EU代表、行き詰ったBREXIT関連協議打開策に躍起」
英国とEU加盟27ヵ国代表は10月20日、ブリュッセルで行われた2日間の協議で大きな進展がみられなかったことを認めた。特に、BREXITの代償として、英国側がいくら補償するかで物別れに終わったという。
EUのドナルド・トゥスク議長(ポーランド出身の政治家)は、交渉が暗礁に乗り上げたとの報道は大袈裟だと語ったが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領などは、交渉はまだ半分も進んでいないと吐露している。
英国のテレーザ・メイ首相は、EU離脱に関わる直接的な案件より、EU・英国間の今後の通商関係等につき協議したいと訴えている。しかしEU側は、それ以前に、BREXITで影響を受ける市民の権利、アイルランドと北アイルランドの国境の取扱い、更にBREXITに伴い英国が支払うべき補償金について合意することが先決だと主張している。
補償金については、英国側が申し出ている200億ユーロ(約2兆6,800億円)に対して、EU側案は600~1,000億ユーロ(700~1,200億ドル、約8兆400億~13兆4,000億円)と試算されており、次回12月14、15日に予定されている交渉で進展がみられるか甚だ疑問である。
10月21日付英
『ジ・インデペンデント』紙:「EU、英国側に国境管理の厳格化に替わる具体案が乏しいと指摘」
EU代表は10月20日、英国側とのBREXIT関連交渉を終えるに当り、英国側に対して、アイルランドと北アイルランド間の国境の取扱いについての具体策を提示するよう強く求めた。これは、アイルランドのレオ・バラッカー首相の求めに応じて、EUが英国側に要求することとしたものである。
これまでアイルランド及び北アイルランド市民は、自由に当該国境の往来が可能であったが、BREXITに伴い、この市民権に悪影響が出ないよう、英国側の柔軟な対応が求められている。
メイ首相は、アイルランドとの平和的関係を維持することは“肝要”とし、同国境にフェンス等を設けるつもりはないとしている。しかし、国境の取扱いについて具体的対応策に言及していないことから、バラッカー首相らは不満を感じている。ただ、バラッカー首相は、次回12月中旬までの8週間の間に、何らかの進展があることを期待すると述べた。
(注)北アイルランド:英国(正式名称は、“グレートブリテン及び北アイルランド連合王国”)のアイルランド島北東部に位置する構成要素の一つであり、アイルランド共和国と国境を接している。1960年代の後半から1990年代にかけ、宗教差別を発端としたユニオニスト(英国との連合維持を主張)、ナショナリスト(英国からの独立を主張)両勢力の私兵組織が騒乱やテロを繰り返す、いわゆる「北アイルランド問題」が発生。現在の北アイルランド政府は、1998年のベルファスト合意によって設立が決定されたもの。なお、同合意においては、英国とアイルランド両国が、北アイルランドの全ての住民にアイルランド人または英国人となる権利を与えるとあり、現在でもこれは大多数の住民に適用されている。
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