先週末、チベット亡命政府(チベット名。英語名は中央チベット行政府CTA)が「ファイブ・フィフティ・フォーラム(今後の5年、及び50年を考える公開討論会)」をダラムサラ(インド北部のヒマーチャル・ブラデーシュ州の都市でCTAの中心地)で開催した。同フォーラムには21ヵ国から180人余りが参加したが、CTAのチベット自治区への帰還はもとより、中国政府との平和的交渉さえ、明るい兆しが全くみえない状況となっている。そこで、
『ワシントン・ポスト』紙の外交・安全保障担当コラムニストが、中国政府によるチベット民族弾圧政策を方向転換させるためには、北朝鮮問題や貿易不均衡問題と同様、米中間協議の主要議題のひとつに組み入れる必要があると説いている。一方、国慶節休暇でチベット自治区を訪れていた中国人観光客一行が、希少動物のアンテロープ(羚羊、注後記)を車で追い回したとして、中国当局から罰せられているが、多分に中国国営メディアによる中国政府善行アピール記事の感が否めない。
10月8日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「非暴力運動も時間切れ-トランプ大統領にチベット救済期待」
10月初め(6~8日)、CTA主催による「ファイブ・フィフティ・フォーラム」がダラムサラで開催された。CTAの今後5年、更に50年後を睨んで、対中国政策をどう進めていくかが協議された。
しかし、これまでCTAやチベット自治区に対する中国政策は頑なで、チベット族は中国国内少数民族(計56民族)のひとつであるとし、独立等の動きは中国の運命共同体を危うくするものとして、徹底的に弾圧してきている。...
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10月8日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「非暴力運動も時間切れ-トランプ大統領にチベット救済期待」
10月初め(6~8日)、CTA主催による「ファイブ・フィフティ・フォーラム」がダラムサラで開催された。CTAの今後5年、更に50年後を睨んで、対中国政策をどう進めていくかが協議された。
しかし、これまでCTAやチベット自治区に対する中国政策は頑なで、チベット族は中国国内少数民族(計56民族)のひとつであるとし、独立等の動きは中国の運命共同体を危うくするものとして、徹底的に弾圧してきている。
特に、国際NGOフリーダム・ハウスによる直近の自由度(人権及び民主主義)評価では、チベットはシリアよりも若干良いが北朝鮮より悪い結果となっている。そしてチベットにとって深刻な問題は、シリアや北朝鮮は国際社会やマスメディアが注目しているが、チベットについては、その非暴力運動などがほとんど無視されていることである。
そこで、チベット民族の人権や信教の自由を擁護していくため、米国政府の本格的介入が必要と考える。米中関係について、米国有利に交渉していくため、北朝鮮問題、米中貿易不均衡問題に加えて、世界が注目する人権問題についても、チベット問題を契機に中国側に強く迫っていくことができるからである。
一方、10月9日付中国『新華社通信』:「チベットで羚羊を追い回した7人の中国人観光客に罰金」
チベット自治区森林局は10月9日、同地域のチベット産羚羊を車で追い回したとして、7人の中国人観光客に罰金刑を科した。
同局担当官によると、車で追い回された羚羊は、トップスピードで逃げまどい、結果として心臓や肺に疾患を負う可能性があるとする。
同局が見回る範囲は300平方キロメーターに及ぶため、実際に羚羊が被害を被ったかどうか確認ができない。しかし、1980年代の違法乱獲で、羚羊の数が20万頭から2万頭まで激減しているため、手厚い保護が必要不可欠としている。
なお、当該観光客には、“希少価値動物の虐待”の罪で合計10万5,000人民元(16万ドル、約1,800万円)の罰金が科せられている。
中国政府には、羚羊以上に、チベット族の手厚い保護こそが必要不可欠ではないだろうか。
(注)羚羊:ウシ科の大部分の種を含むグループ(分類学的には、ウシ科の約130種のうち約90種が含まれる)。ウシ科共通の特徴-生え変わりや枝分かれのない中空の1対の角、草食、小さい二股の蹄、短い尾など-を有する。“カモシカの足”の基になった動物。
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