これまで何度か報じたとおり、中国と長きにわたり国境問題を抱えるインドは、中国と対峙するため日米との連携を強化している。ただ、国際貿易で中国に依拠しているインドとしては、中国で開催されたBRICS新興国サミットに急きょ出席して、経済連携は継続させたいと考えている。しかしながら、中国が推し進める「一帯一路(OBOR)」新シルクロード政策の下、パキスタンを縦断する道路・鉄道インフラ整備によって、インド包囲網が築かれることに強い懸念を抱いている。一方、中国は、南シナ海領有権問題でこれまで中立的立場を取っていたが、長らく親米政策を取ってきているシンガポールの抱き込みを着々と進めている。
9月19日付米
『CNNニュース』:「インドの新国防相、多くの難問に直面」
インドのナレンドラ・モディ首相は9月初め、一部内閣改造を行ったが、特筆されるのが国防相に女性のニルマラ・シタラマン氏を任命したことである。ビピン・ラワット陸軍参謀長は、目下インドは“二つの前線”(すなわち中国とパキスタン)で対峙を余儀なくされていると発言しており、シタラマン国防相が直面する課題は大きい。
中国とは、6月中旬から2ヵ月半余り、ドクラム(インド北東部のシッキム州東)で睨み合いを続けていた。...
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9月19日付米
『CNNニュース』:「インドの新国防相、多くの難問に直面」
インドのナレンドラ・モディ首相は9月初め、一部内閣改造を行ったが、特筆されるのが国防相に女性のニルマラ・シタラマン氏を任命したことである。ビピン・ラワット陸軍参謀長は、目下インドは“二つの前線”(すなわち中国とパキスタン)で対峙を余儀なくされていると発言しており、シタラマン国防相が直面する課題は大きい。
中国とは、6月中旬から2ヵ月半余り、ドクラム(インド北東部のシッキム州東)で睨み合いを続けていた。両軍が急転直下引き上げたのは、9月初めに中国の厦門(シアメン)で開催されたBRICS新興5ヵ国サミットに、モディ首相が欠席すると表明したため、中国側が妥協したためと言われる。
また、中国が推し進めるOBOR政策の下、中国が「中国・パキスタン経済回廊」というパキスタン北部~南部へ通じる道路・鉄道建設を進めていることに反発して、南アジア諸国の中で唯一、OBORサミットを欠席し、また、OBOR枠組み協定にも調印していない。ただ、中印貿易高は700億ドル(約7兆7,000億円)に上り、インドにとって最大の貿易相手国となっており、中国との経済連携は無視できない。
パキスタンについては、印パ戦争・カシミール紛争等、長らく国境問題を抱えてきた。ナワズ・シャリーフ首相の突然の辞任(編注;パナマ文書で不正疑惑が暴露され、最高裁から不適格判断を受け、7月末に辞任)を受けて行政が混乱しており、パキスタン軍の発言力が強まることで、益々印パ間の軋轢が高まってくるとみられる。
同日付インド『インディアン・エクスプレス』紙:「日米印、航行の自由及び領有権への誠実対応を確認」
日米印の外相が9月18日、航行の自由及び領有権問題への誠実な対応を確認する「共同外交声明」を発表した。河野太郎外相、レックス・ティラーソン国務長官、スシュマ・スワラージ外相が協議して合意したものである。
同声明では、中国が進めるOBOR政策の下、パキスタンが実効支配するカシミールから同国南部まで通ずる道路・鉄道インフラ建設が進められることによって、インドの領有権が犯される恐れについて懸念する旨言及されている。
一方、同日付中国『環球時報』:「シンガポールが中国との友好関係再構築を決意したと専門家が分析」
専門家の分析によると、2014年以来二度目の訪中となったシンガポールのリー・シェンロン首相は、ギクシャクしていた対中国関係を元の友好関係に戻す決意を固めた模様であるという。何故なら、随分前から決まっていた10月の訪米の前に、9月15日に突然、同首相の9月19日からの訪中が明らかにされたからである。
中国側も、まず李克強(リー・コーチアン)首相がシェンロン首相を出迎え、また、翌日には習近平(シー・チンピン)国家主席他幹部も同首相との会談を設定して、歓迎の意を表している。
シンガポールは、今年5月に開催されたOBORサミットに招待されておらず、また、9月初めのBRICS新興5ヵ国サミットにも、東南アジア諸国連合(ASEAN)を代表してタイが特別招待されたのに、シンガポールには声が掛けられなかった。
これまでシンガポールは、親米政策を取ってきたものの、中国の急速な台頭に直面して、ASEANの中にあって中国と対峙していくことは得策ではないと判断するに至ったとみられる。
なお、1ヵ月後に中国共産党第19回全国代表大会を控える習主席にとっても、小国とは言え、国際金融界で存在感を示すシンガポールとの関係改善は、追い風になるものと分析される。
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