米国、メキシコ、カナダの3カ国によるNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉が16日、米ワシントンで開始した。ライトハウザー米通商代表は、「NAFTAは失敗だった」として貿易不均衡や雇用喪失等の問題を挙げ、米国は表面的な変更では合意しないと冒頭から自国第一主義に基づく強硬姿勢で臨み、基本的に現在の枠組みを維持する立場のカナダ・メキシコ両国との違いが鮮明になった。多くの米メディアが速報している。
NAFTAは、3カ国間の関税を含む多くの障壁を除去し、発効以来23年で圏内の貿易額を3倍に増加させた。しかしトランプ米大統領は、NAFTAを史上最悪と呼び、大幅な修正または撤退を国内向け公約としている。再交渉初日の16日、ライトハウザー代表は協議の冒頭で「トランプ大統領は、幾つかの章や条項の単なる微調整には興味がない。協定は非常に多くの米国人を失望させており、大幅な改善が必要と考えている。」と強調した。
同代表は、NAFTAが賃金の安いメキシコの労働力を活用するよう促した結果、少なくとも70万人の米国人が職を失ったと主張した。さらにNAFTA圏内で製造される製品について、圏内、特に米国内で生産された原材料や部品を使用するよう、原産地規則を厳格化する等、協定を変更したいと述べた。
こうした米国の交渉のスタンスは、当初から予想されていたものであるが、今後の協議の着地点を不透明なものとしており、米国は望む結果が得られなければ、本当に脱退するとの見方も強い。交渉の結果次第では、日本企業も部品の調達網の見直しを迫られる等の大きな影響があり、メキシコに工場を持つ自動車産業等を中心に成り行きを注視している。
カナダとメキシコの交渉団は、経済的・技術的な変更を反映するために協定を改定する必要性は認めたものの、NAFTAは経済的な成功事例として、基本的に維持していくとの立場を明確にし、一方的に自国の国益を主張する米国をけん制した。
メキシコのグアファルド経済相は、16日の交渉を終えて記者団に対し、米国の雇用が一定程度メキシコに移動した事実は認めたものの、最終的な交渉の目的は、解決策を見出す形で、現在の協定の内容を改善することだとして、メキシコシティで来月交渉を再開する際に、お互いの相違点を縮めて進展が得られるよう、今回各国が基本的立場を展開することを期待すると述べている。カナダのフリーランド外相も交渉後会見し、「カナダと米国の貿易収支は全体で見れば均衡しており、互いに利益をもたらしている。」と主張した。
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