<大学の国際競争力>
文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所がこの程、日本の大学や研究機関が2013~2015年に発表した論文数について、日本及び主要国についての実績・傾向を公表した。
それによると、日本の論文数は年平均6万4,013本と、米国、中国、ドイツに次ぐ4位となったという。10年前は、年平均6万7,888本で米国に次ぐ2位であった。
研究開発費の多い7ヵ国で見ると、この10年で論文数が減ったのは日本だけで、他の6ヵ国(米国、中国、ドイツ、韓国、フランス、英国)はいずれも増加したという。...
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<大学の国際競争力>
文部科学省傘下の科学技術・学術政策研究所がこの程、日本の大学や研究機関が2013~2015年に発表した論文数について、日本及び主要国についての実績・傾向を公表した。
それによると、日本の論文数は年平均6万4,013本と、米国、中国、ドイツに次ぐ4位となったという。10年前は、年平均6万7,888本で米国に次ぐ2位であった。
研究開発費の多い7ヵ国で見ると、この10年で論文数が減ったのは日本だけで、他の6ヵ国(米国、中国、ドイツ、韓国、フランス、英国)はいずれも増加したという。特に、中国は約4.2倍、韓国は約2.2倍増えたとする。
かかる傾向を見ると、大学の国際競争力、すなわち、世界大学ランキングにおける、日本及び他主要国の評価結果を如実に表していると言わざるを得ない。
2016年2月19日付当コラムNo.13<大学教育>の中で、次のように引用した。
すなわち、“英国タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THI、注1後記)発行の「世界大学ランキング2015」によると、トップ10は米国6大学、英国3大学、スイス1大学で占められているのみならず、100位までには僅か東京大学、京都大学の2校しかランクインしていない。一方、シンガポール国立大学がアジア1位(全体の26位)となっただけでなく、トップ100には、中国2大学、香港2大学、韓国1大学がランクインしている。”
そして、誠に残念ながら、THI発行の「世界大学ランキング2016」においても、日本の大学の評価は改善しておらず、かつ、更にアジア他国の躍進を許す結果となっている。
・トップ10;米国6大学、英国3大学、スイス1大学
・トップ100;日本2大学(東大・京大)、シンガポール2大学(シンガポール国立大・南洋理工大)、中国2大学(北京大・清華大)、香港3大学(香港大・香港科技大・香港中文大)、韓国2大学(ソウル大・韓国科学技術院)
一方、同じくTHIが今年6月に発行した「世界大学世評ランキング2017」(注2後記)では、日本の大学の世評はいたって芳しい。
・トップ10;米国8大学、英国2大学
・トップ100;日本6大学(全体11位の東大・同25位の京大・大阪大・東北大・東京工大・名古屋大)、シンガポール2大学(全体27位のシンガポール国立大・南洋理工大)、中国6大学(全体14位の清華大・同17位の北京大・浙江大・復旦大・上海交通大・南京大)、香港3大学(全体39位の香港大・香港中文大・香港科技大)、韓国3大学(全体46位のソウル大・韓国科学技術院・成均館大)
ただ、大学の国際競争力となると、冒頭の論文数や、THIなどが評価する世界大学ランキングの結果が大きく物を言うと考えられる。
従って、日本の大学には、何十年もかけて獲得してきた高い評判を損なわないために、それに見合った学術研究の実績を上げていくことが望まれる。
(注1)THI:英国の教育専門誌で、タイムズ紙から独立して2004年以降毎年世界大学ランキングを発表。査定基準は、①Teaching(教育-学習環境)、②International Outlook(国際的な見通し-教育陣と学生の質)、③Industry Income(産業へ与える利益-革新性)、④Research(研究-ボリューム、収益性、評価)、⑤Citations(論文の引用度合い)。
(注2)世界大学世評ランキング:世界137ヵ国の著名研究者に対して、①大学の世評、②大学の認知度、等についてアンケートを実施。2017年版では、合計10,566件の回答を基に評価。
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