トランプ政権は、選挙戦時の公約に基づき、いよいよカナダ・メキシコと北米自由貿易協定(NAFTA)改定交渉を開始する。外交面では、環太平洋経済連携協定(TPP)及び気候変動抑制に関する多国間の国際協定(パリ協定)からの離脱に続く公約履行となる。しかし、専門家の評価では、雇用面含めてNAFTA改定交渉の優位性は認めがたいと厳しい。
8月14日付米
『CNNニュース』:「トランプ政権、8月16日よりNAFTA改定交渉開始」
ドナルド・トランプ大統領は選挙戦を通して、NAFTAは数百万人の米国人雇用喪失をもたらした最悪の協定だと非難し、必ず米国民にとってより良いものに改定すると宣言していた。
しかし、米商工会議所によると、カナダとメキシコとの貿易業務に携わる米国人労働者は約1,400万人に上るが、1997~2013年の間に、メキシコ人に奪われた雇用は約80万人に過ぎないという。...
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8月14日付米
『CNNニュース』:「トランプ政権、8月16日よりNAFTA改定交渉開始」
ドナルド・トランプ大統領は選挙戦を通して、NAFTAは数百万人の米国人雇用喪失をもたらした最悪の協定だと非難し、必ず米国民にとってより良いものに改定すると宣言していた。
しかし、米商工会議所によると、カナダとメキシコとの貿易業務に携わる米国人労働者は約1,400万人に上るが、1997~2013年の間に、メキシコ人に奪われた雇用は約80万人に過ぎないという。
また、国際貿易専門家によれば、トランプ政権がNAFTA改定の目標としているところは、トランプ大統領が離脱を決めたTPP条項に近似しているという。更に、例えば、自動車部品のNAFTA当事国産供給率を現行の62%より上げるとなると、米国内自動車販売価格が値上がりすることになると批評している。
なお、トランプ政権は、いよいよ8月16日からNAFTA相手国のカナダ・メキシコと改定交渉を開始することとなった。メキシコ側は、来年の大統領選挙にかからないよう、年末までの5ヵ月間で決着を付けたいと望んでいる。しかし、NAFTA成立交渉に数年を要した結果から、改定交渉を年末までに目処を付けることは至難の業であろう。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「トランプ政権のNAFTA改定交渉に自動車業界が猛反発」
トランプ政権が目指すNAFTA改定交渉において、目玉のひとつとされるのが、自動車関連通商条項の見直しである。米連邦国勢調査局によると、昨年、メキシコからの自動車及び同部品取引に関わる貿易赤字額が740億ドル(約8兆1,400億円)に上るという。
そこで、ロバート・ライトハイザー通商代表は、メキシコ生産の自動車について、安価なアジア製部品使用率を大幅に削減させることで、結果として米国内雇用を高めることを狙っている。
しかし、自動車業界は、北米産部品供給率を現行の62.5%より更に上げられると、これまで築き上げられた国際部品供給網が立ち行かなくなると猛反発している。すなわち、この結果、アジアや欧州製自動車に価格競争力で大きく劣ることになるからだという。
また、米自動車推進政策会議(フォード、GM、フィアット・クライスラー3社が組織した対議会陳情団体)のチャールズ・アザス副議長は、NAFTAで認められた無税枠がなくなることは大問題だとしている。すなわち、もしトランプ大統領が、NAFTA改定交渉結果に満足がいかないとして、NAFTAそのものから離脱するとしてしまうと、当該無税枠の喪失で、結果として40~50億ドル(約4,400~5,500億円)のコスト上昇をもたらすことになってしまうからという。
同日付カナダ
『ディジタル・ジャーナル』オンラインニュース:「米・カナダ・メキシコがNAFTA改定交渉開始」
1994年に成立したNAFTAの改定交渉がついに始まる。
トランプ大統領は、特にメキシコ貿易での貿易赤字額640億ドルの大幅削減を目論んでいる。しかし、メキシコ経済にとってNAFTAは基盤であり、米国向け輸出額は同国の総輸出額の80%を占める。従って、特にメキシコの製造業・農家にとって、米国との関係悪化は死活問題となる。
なお、カナダとの貿易収支はそこそこバランスが取れているが、酪農製品・ワイン・穀物貿易では、米国にとって不利となっているとする。
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