北朝鮮の核・ミサイルの脅威が増す中、国連安全保障理事会は追加制裁を決議して、石炭や鉄鉱石、海産物などの輸出を禁止するほか、海外で働く北朝鮮労働者を現在の水準から増やすことや北朝鮮との新たな合弁事業などを禁じた。しかし、制裁対象外となっている衣料品縫製では、中国の衣料品貿易会社の下請けとして、“中国製”衣料品の輸出で外貨稼ぎを行っている。
8月14日付米
『CNBCニュース』:「北朝鮮の衣料縫製工場、中国の下請けで“中国製”衣料品縫製で収益確保」
丹東(タントン、中国北東部遼寧省東端の北朝鮮国境付近の都市)在の貿易商によれば、北朝鮮の縫製工場で作られ、“中国製”のラベルを付けて海外に輸出される衣料品取引が増大しているという。国連安保理が新たに採択した北朝鮮追加制裁には、衣料品の輸出は含まれておらないため、中国衣料品貿易会社にとって、中国より安価な労賃(中国のほぼ半分)での取引で多くの収益が上げられるとする。...
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8月14日付米
『CNBCニュース』:「北朝鮮の衣料縫製工場、中国の下請けで“中国製”衣料品縫製で収益確保」
丹東(タントン、中国北東部遼寧省東端の北朝鮮国境付近の都市)在の貿易商によれば、北朝鮮の縫製工場で作られ、“中国製”のラベルを付けて海外に輸出される衣料品取引が増大しているという。国連安保理が新たに採択した北朝鮮追加制裁には、衣料品の輸出は含まれておらないため、中国衣料品貿易会社にとって、中国より安価な労賃(中国のほぼ半分)での取引で多くの収益が上げられるとする。
韓国貿易投資振興公社(KOTRA)によると、衣料品輸出は石炭や他の鉱物資源に次いで2番目の輸出額を誇り、2016年では7億5,200万ドル(約827億円)に上るという。なお、2016年の北朝鮮全体の輸出額は28億2,000万ドル(約3,100億円)と、前年比+4.6%増となっている。
また、中国の税関によると、今年上半期の中国から北朝鮮向けの布やその他衣料品原料の輸出額は、前年比+30%増の16億7,000万ドル(約1,840億円)に上っているという。
8月13日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「実際は北朝鮮で縫製の“中国製”衣料品が海外向けに輸出」
国連安保理は8月5日、北朝鮮による度重なる核・ミサイル開発の推進を罰するため、追加の制裁決議を採択した。これによって、北朝鮮の30億ドル(23億英ポンド、約3,300億円)に上る輸出額は3分の1減少させられるとする。
しかし、衣料品の輸出取引は制裁対象外であるため、中国の衣料品貿易会社の下請けとして、“中国製”製品の縫製事業が更に活発化している。丹東の衣料品貿易商から日本、米国、カナダ、欧州、韓国、ロシア向けに輸出された“中国製”製品は、全てが北朝鮮縫製品であるという。
丹東の貿易商の話では、安価な北朝鮮労賃のお蔭で、縫製費用が75%に抑えられるという。これは当たり前の話になっているというが、西側諸国の有名衣料品ブランドの全てが承知しているということではない模様である。
現在は閉鎖されている開城(ケソン)工業団地において、当時の北朝鮮労働者の賃金が月平均160ドル(124英ポンド、約1万8,000円)だったのに対して、中国人の労賃は月450~750ドル(348~580英ポンド、約4万9,500~8万2,500円)であった。そして、現在北朝鮮で中国衣料品会社の下請けをしている北朝鮮人の労賃は、開城での労賃より遥かに低いという。
8月14日付アジア
『アジアン・コレスポンデント』オンラインニュース:「北朝鮮縫製品が“中国製”として取引」
丹東貿易商の話では、北朝鮮人の労賃は月平均75~160ドル(約8,300~1万8,000円)であるのに対して、中国では450~750ドル掛かるという。そこで、北朝鮮で縫製した衣料品が、日本、米国、韓国、欧州向けに“中国製”として販売されているという。
また、米朝間緊張が高まる中、それにはお構いなしに中国人旅行者の北朝鮮入国が増えている。
『ロイター通信』が中国人旅行者にインタビューしたところでは、北朝鮮の暮しがどうなっているか覗いてみたいという人が多く、一方、北朝鮮の最近のミサイル発射実験についてはほとんどが意に介していないという。
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