米国通商代表部(USTR)は17日、1994年に発効したNAFTA(北米自由貿易協定)改定のための交渉戦略の概要を議会に宛てた文書で公表した。交渉は来月の半ば以降に行われる予定。米国の貿易取引では初めて、他国による為替操作を阻止する仕組みの導入を追求していくこととしており、その内容が注目されている。ロイター通信などが報じた。
これまでトランプ政権の貿易に関する方針については、大統領選挙運動期間の演説内容や、大統領のツイッターでの主張等によるしかなかったが、今回のNAFTA交渉方針の概要を示した文書を読むと、それがどのようなものであるかがわかる。
来月にも予想される交渉に先立ち、議員たちに送られた文書の中で、米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は、トランプ政権は、米国以外のNAFTA加盟国である2カ国、カナダとメキシコに対する米国の貿易赤字の削減を目指すと述べた。...
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これまでトランプ政権の貿易に関する方針については、大統領選挙運動期間の演説内容や、大統領のツイッターでの主張等によるしかなかったが、今回のNAFTA交渉方針の概要を示した文書を読むと、それがどのようなものであるかがわかる。
来月にも予想される交渉に先立ち、議員たちに送られた文書の中で、米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は、トランプ政権は、米国以外のNAFTA加盟国である2カ国、カナダとメキシコに対する米国の貿易赤字の削減を目指すと述べた。またいかなる国も、不公正に競争上の優位な立場を得ようとして、自国通貨を安く誘導してはならないと主張している。
カナダとメキシコは、為替操作国とはみなされていないが、通貨安への誘導の抑止が今回の交渉の目的として言及されていることは、懸案となっている5年間の米韓自由貿易協定の改定交渉等、米国の将来の貿易取引のために、それが基本的な考え方となる可能性がある。韓国は為替操作国である可能性があるとして、USTRの監視リストに挙げられてきた。今回トランプ政権がNAFTAの交渉の場で行う要求は、中国、日本等世界中の他の国々との間の貿易関係や、それらの国々とカナダ・メキシコ間の貿易関係に影響を及ぼすものと予想される。
ライトハイザー代表は、交渉の優先事項として、カナダ・メキシコの企業を反ダンピング等の事案で米国が追及することをほぼ不可能としている、現在の紛争解決の仕組みの撤廃、カナダ・メキシコへの農産物の輸出に関する非関税障壁の撤廃等を挙げている。また、NAFTAの原産地規則を強化し、他国が協定の利益を得ないように、米国製品の部品や原材料の供給者にインセンティブを与えることを求めていくと述べた。USTRはそうしたインセンティブについて詳細に触れず、どの位の割合の部品や原材料が北米産でなければならないか等については、明らかにしなかった。
これまで改定交渉の論議に加わった、労働組合の代表や一部の民主党議員らは、トランプ大統領に、NAFTA交渉で米国の労働者を保護するという、2016年の選挙運動での公約を守るよう再度要求した。NAFTAについては、従来から労働界の強い改定要望がある。トランプ大統領は、新しい貿易関係を築くことにより、雇用を回復し、賃金を上昇させると約束していた。
NAFTAの貿易量は3カ国間で当初の4倍となっており、2015年には1兆ドルを超えた。しかし2010年までの10年で、米国の製造業は600万人分の雇用を失っている。1994年にはカナダとの貿易では若干の赤字だったが、メキシコとの貿易ではわずかながら黒字であった。しかしその後両国とも赤字となり、その金額が拡大している。昨年は、カナダとの間で110億ドル、メキシコとの間で640億ドルの赤字だった。
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