フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相は、13日にパリで行われた両国の閣僚会議の後に記者会見を行い、新型戦闘機を共同開発する方針を発表した。英国のEU(欧州連合)離脱の決定を受けて、EUの両輪となる両国の安全保障面での関係強化が狙いであると見られている。ロイター通信等が報じた。
マクロン大統領は、新型戦闘機の共同開発計画について、「プロジェクトの目的は、調査研究、開発を共に行い、共に同じ戦闘機を使用し、両国がうまく調整して輸出を行うことだ。深遠なる革命であり、我々は革命を恐れていない。」として、「2018年半ばまでに、両国で共同の工程表を作り終えたい。」と決意を表明した。これは両国の現在の戦闘機に代わるものとなり、「我が国の軍と政府にとっては、非常に重たいプロジェクト」であるが、コスト節約のメリットもあり、市場に出回っている数種の戦闘機間の競争に終止符を打つことになると指摘した。
フランスは1980年代に「ユーロファイター」の共同戦闘機開発プロジェクトから離脱して、自国のダッソー・アビアシオン社による「ラファール」戦闘機を製造した。その結果、両陣営は激しい販売競争を繰り広げることとなる。現在では、欧州には3種類の戦闘機がある。ドイツと英国などの共同開発機「ユーロファイター・タイフーン」、フランスの「ラファール」、スウェーデンの「グリペン」だ。高額な開発予算がかかることから、EUでは戦闘機は1種だけで十分と言う専門家もおり、今回の仏独の共同開発により、勢力図に大きな変化が起きそうだ。
仏独が英国のEU離脱を見据えて、次期戦闘機の共同開発を進めることにより、英国は米国との防衛協力をさらに進めていくことになるかも知れない。英国は「ユーロファイター」の共同開発グループに属する一方、米国のロッキード・マーティン社が主導する新型のステルス戦闘機「F35計画」にも参加しており、EUを離脱すれば、米国との提携を強化していくとの見方が強まっている。
仏独両国は今回、以前共同開発したユーロコプターのタイガー(ティーガー)攻撃へリコプターの時期モデルや、戦術地対空ミサイルについて、協力の枠組みを作ることについても合意した。また重戦車や大砲等、地上システムの調達についても協働することで一致した。2019年より前に契約に調印することを目指すとされているが、これはその後にドイツが主導する欧州ドローンプロジェクトが計画されているからである。本プロジェクトは、EUが米国やイスラエル製の軍事ドローンに依存している現在の状況を一変するものとして期待されている。
両首脳はまた、欧州の防衛、対テロの戦い、移民問題等に関してEU域内の統一した取り組みを強化していくことについて議論した。マクロン大統領は、EUで単一の財務相、議会、予算等を持つことを提案している。メルケル首相はそうしたアイデアについては、「自分はオープンであり、個人的には賛成」と述べている。欧州地域の予算についても、「2012年に自ら同様の提案をしたので反対しない。当時は失敗に終わったが、今またこの案をテーブルに戻すのは良いことだ。フランスに新たな政府が樹立されてすぐ後に、我々は仏独関係を新たな力で活性化していくつもりであることを示せたと思う。」と語った。
両国はさらに、法人税の課税方針、気候変動に対する取り組みの強化、保護主義への反対といった議題についても話し合った。トランプ米大統領のパリ協定からの離脱や、鉄鋼製品輸入に対する課税や国毎の割当額の決定の動きなどについては、反対の立場を打ち出している。マクロン大統領はメルケル首相との会談の後すぐに、パリを訪問中のトランプ大統領と会い、両首脳の夫人と一緒に夕食を取った。
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