米国の駆逐艦が2日、中国が実効支配し軍事拠点化を進めていると見られる西沙諸島(英名:パラセル諸島(Paracel Islands))の周辺で「航行の自由(Freedom of Navigation)作戦」を行った。トランプ政権では2回目の実施となり、中国との間で緊張が高まるものと見られている。
米当局によると、横須賀を母港とする米海軍のミサイル駆逐艦「ステザム(Stethem)」が2日、南シナ海の西沙諸島にあるトリトン島(中建島)の12カイリ(約22.2㎞)以内の海域を航行した。国際基準により、海岸の基線から12カイリ以内の帯状の水域は、沿岸国の主権が及ぶ「領海」と定義されている。トリトン島は1970年代の半ばに中国がベトナムと戦って占領し、その後も実行支配しており、現在では中国、台湾、ベトナムの3カ国が領有権を主張している。
トランプ政権になってから、米海軍の駆逐艦が、南シナ海で中国が領有権を主張する島の周辺で「航行の自由作戦」を実施したのは、5月に続いて2回目のことである。米駆逐艦の「デューイ(Dewey)」が5月24日、南シナ海の南側に位置する南沙諸島(英名:スプラトリー諸島(Spratly Islands))に中国が造成した7つの人口島の内の1つであるミスチーフ礁(美済礁)の12カイリ以内の海域を航行した。
米艦船が島の近くを航行した際、中国の艦船によって追跡されたと米高官が明かした。米海軍は同作戦を世界中の論争ある海域で実施しており、中国を特別に狙って実施しているわけではない旨を強調したが、西沙諸島やトリトン島周辺の海域では、昨年の始めと秋にそれぞれ艦船が通過して作戦を実施している。
中国は南シナ海で次々と人工島を造成し、滑走路を建設するなどして軍事要塞化していると言われている。先週公開された新しい衛星映像によると、中国は引き続き南沙諸島に軍事施設を建設していることが明らかになった。今回の作戦の実施は、同地域で実効支配を強める中国をけん制するとともに、北朝鮮の核・ミサイル開発の問題でもっと積極的な役割を果たすよう圧力をかける狙いもあるものと見られている。
トランプ政権は、6月29日に台湾に14億ドルの武器売却を決定した他、同日に2名の中国人と海運会社が北朝鮮の核とミサイル開発計画を支援しているとして制裁を科し、中国の銀行が北朝鮮のために資金洗浄をしたと非難するなどした。さらに1日に行われた香港の返還20周年の式典に関連して、国務省が中国は香港市民の自由を侵害していると懸念を表明するなど、中国との間で緊張を高める行為を続けている。
中国は当然ながら、今回の米の「航行の自由作戦」に対し反発した。外務省の陸慷(Lu Kang)報道局長は2日、「深刻な政治的、軍事的挑発だ。」として米国を批判している。また艦船と戦闘機を現場に派遣して、警告を実施したことを明らかにし、今後も国の主権と安全を守るためあらゆる必要な措置を取ると述べた。
トランプ大統領は3日、日本の安倍首相、中国の習近平国家主席とそれぞれ電話会談をする予定であり、また今週ドイツで行われるG20首脳会議時に習主席と米中首脳会談を行うこととしており、今後の対応が注目される。
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