米連邦最高裁判所は26日、トランプ大統領が今年の3月に署名した中東・アフリカのイスラム圏6カ国からの入国を一時的に禁止する大統領令に関して、今秋に最終判断を下すまで、一部の執行を認める決定を下した。大統領令は連邦高裁で差し止められていたが、その解除を求めていた政権の主張が一部認められたことになり、トランプ大統領のテロ対策等の政策が一歩前進した。
連邦最高裁は、大統領令が対象とする6カ国(イラン、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメン)からの入国者については、10月以降に審理を行って最終判断を下すまでの間、既に米国内に親族がいたり、事業をしたりするなど、米国の個人や組織と「真正な関係」(bona fide relationship)がない場合には、入国禁止令は有効であると判断した。また難民の受け入れを120日間禁じることについても限定的に執行を認めた。政府は最高裁が認めた入国制限は72時間後に発行するとしている。
トランプ政権は、テロ支援国家の指定や、政情が不安定化しているなどの安全保障上の理由から、6カ国からの入国者によるビザ発給手続の念入りな審査のために90日間の入国禁止が必要であるとしてきた。反対派は、入国禁止令は対象者がイスラム教徒であることを理由としており、違法であると主張している。
最高裁の決定は、6カ国から米国に入国しようとする人々が、ビザを取得するのに証明しなければならない「真正な関係」の内容について、「個人については、密接な家族の関係が必要だ。」「その関係は正式なもので、文書化されており、通常の方法で形成されたもので、入国禁止の回避を目的としたものであってはならない。」などと説明している。
今回の判断では、クラレンス・トーマス判事、サミュエル・アリート判事、そしてトランプ政権が任命したニール・ゴーサッチ判事の3人の保守派の裁判官が、大統領令への差し止めを全面的に解除し、全てを有効化すべきとの意見を主張した。トーマス判事は、国家の安全保障を保護する政府の利益は、入国を禁じられた人々の苦難に優先すると述べている。
トランプ大統領は、1月に就任後その僅か1週間後に、イラクを含めた7か国からの入国の90日間の禁止と、全ての難民の受け入れを禁じる大統領令に署名したが、対象や適用方法が定まらない内に執行されたため、各地の空港で大混乱が生じた。さらにイスラム教徒の排斥であるなどと批判され、一部の州で執行の差し止めを受け、控訴審もこれを支持したため、一旦これを撤回した。
その後3月に対象を6カ国に絞り、テロ対策であることを前面に打ち出した新大統領令を発出していたが、再びハワイ州などの連邦地裁において、全米で執行を停止する判決が相次ぎ、バージニア州やカリフォルニア州の連邦控訴裁判所(高裁)も地裁判断を支持した。バージニア州リッチモンドの第4巡回区連邦控訴裁判所は、禁止令はイスラム教徒に対する「宗教的な敵意に根付いており」とし、カリフォルニア州サンフランシスコの第9巡回区連邦控訴裁判所は、禁止令は国籍を根拠としていると判示するなど、トランプ大統領は苦境に陥っていた。
連邦最高裁の決定を受け、トランプ大統領は声明を出した。「最高裁の決定は、我が国の安全保障にとって明確な勝利である。」として、「大統領として我々に危害をもたらそうとする人物を米国に入国させるわけにはいかない。米国とその全ての国民を愛し、勤勉で生産的な人々に来てもらいたい。」と述べた。さらに「国家の責任者としての私の第一の責任は、米国民の安全を守ることだ。今日の決定は、我々の国土を保護するための重要な手段を用いることを許してくれるものだ。」と付言した。
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