今月5日にカタールとの断交を発表したサウジアラビアなどの4カ国は22日、関係正常化の条件として、13項目の要求を仲介役のクウェートを通じて提示した。サウジに批判的なカタールの衛星ニュース局アルジャジーラの閉鎖や、サウジと対立しているイランとの外交関係縮小など非常に厳しく困難な内容となっており、カタールがこれを受け入れる可能性は低く、断交の長期化は避けられない見通しだ。アラブ諸国はカタールに10日の検討期間を与え、全てに応じるよう求めている。
4カ国はカタールがアルカイーダやIS系のグループを中東全域で支援したと非難している。それらの過激派グループは、レバノンのヒズボラや、かつてヌスラ戦線として知られたシリアのアルカイーダの一派等、カタールが関係を絶つべき集団とされている。4カ国は米国によってテロ集団と指定された過激派への資金提供の停止、カタールが支援したサウジ等の国内の反対派勢力についての詳細な情報の提供、カタールがかくまったとされる、テロリストとして手配中の全ての人物の引き渡し等を要求している。
カタールは過激派に資金提供したり、彼らを支援したりしたことについては、強く否定しているが、ハマスのような過激派グループとの対話を促進することは、世界的な対立を解決する鍵であると主張して、そうしたグループのメンバーがカタールに居住することを認めている。
さらに4カ国は、カタールが湾岸協力会議と協調するよう要求している。湾岸協力会議は、イランの政治的、経済的影響力に対抗する地域共同体であり、サウジ他のイスラム・スンニー派の諸国は、カタールが、サウジと長年敵対するシーア派の国イランとの関係を不適切に強化しているとして非難してきた。カタールがイランとの外交関係を縮小し、カタール国内からイランの革命防衛隊のメンバーを追放し、イランとの通商貿易は米国の制裁に則って行うことを求めている。2015年の核合意により、イランに対する制裁は一部が緩和されたが、現在でも有効だ。
イランとの外交関係を縮小することは、非常に難しい要求と見られている。カタールは巨大な海底天然ガス田をイランと共有しており、それは2022年にサッカーのワールドカップを開催する小国に多大な富をもたらしているからだ。また各国の断交後、孤立したカタールに対し、イランが食料品を供給するなどして支援しており、両国関係は逆に深まっている。
さらに要求リストには、カタールに約100人が駐留するトルコ軍の撤退や賠償金の支払い、そしてドーハを本拠地とする衛星放送テレビ局、アルジャジーラの閉鎖等が挙げられている。アルジャジーラの閉鎖については、その英語系のネットワーク等、関連会社も全て閉鎖するよう求めている。
カタール政府の出資や支援もあり、アルジャジーラはアラブ系テレビ局としては最も視聴されている局の1つであるが、ムスリム同胞団のようなイスラム原理主義者の動きを後押ししたり、サウジの人権問題を報道したりするなど、長い間他の中東諸国の怒りを買ってきた。アルジャジーラは、ジャーナリズムへの攻撃であり、人々の情報を得る権利を侵すものとして反発しており、カタール政府も既に応じるつもりはないと表明した。
カタールは、要求リストは主権に関わることにまで干渉しているとして反発しており、国境の封鎖や禁輸措置等が解かれるまでは交渉に応じないと述べた。仮にカタールがこれらの要求を受け入れたとしても、最初の年は月に1回、2年目には四半期に1回審査が行われ、10年間その順守状況がチェックされるという厳しい条件が付されている。
米国はカタールに中東最大のアル・ウデイド空軍基地を持ち、約10,000人の米兵を駐留させてIS掃討作戦などの拠点としている。またバーレーンにも第5艦隊の司令部を置いており、カタールとアラブ諸国の対立が長期化すれば、米軍の中東での活動にも支障が出る恐れがあり、ティラーソン米国務長官は、関係諸国に事態を収拾するよう、かねてから要請してきた。
サウジではイランやカタールに強硬なムハンマド副皇太子が皇太子に昇格して、強大な実権を手中にしている。米国は「要求は合理的で、実行可能なもの」でなければならないと警告していたが、今回の要求内容はカタールを一層孤立させるものになりかねず、断交は長期化が避けられない状況となっている。
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