トランプ米大統領は、16日にフロリダ州を訪問し、マイアミで新たな対キューバ政策に関する大統領令に署名し、演説を行って正式に内容を発表する。ホワイトハウスの高官が15日、オバマ前政権の政策を見直し、一部の規制を強化することを明らかにしたが、キューバの人権違反を理由に、同国への渡航制限の強化やキューバ軍と関係のある企業との取引の禁止などがその内容になると見られている。
トランプ大統領は先ず、キューバへの米人観光客の渡航制限は引き続き有効であることを強調し、これまで渡航することを許された12の事由でしか、米国市民の同国への渡航を認めないことを改めて宣言するものと思われる。それらの事由とは、家族との面会、政府関係者の公用、教育や宗教的活動、診療所、キューバ国民への支援などであり、観光は含まれていない。
軍関係の企業との取引の禁止については、GAESAとして知られるキューバ軍傘下の企業グループによって行われる商行為を念頭に置いており、キューバへの通商のための渡航も、GAESAによって行われる商行為ではなく、キューバ国民によって行われる民間の商行為のためだけに限定する。...
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トランプ大統領は先ず、キューバへの米人観光客の渡航制限は引き続き有効であることを強調し、これまで渡航することを許された12の事由でしか、米国市民の同国への渡航を認めないことを改めて宣言するものと思われる。それらの事由とは、家族との面会、政府関係者の公用、教育や宗教的活動、診療所、キューバ国民への支援などであり、観光は含まれていない。
軍関係の企業との取引の禁止については、GAESAとして知られるキューバ軍傘下の企業グループによって行われる商行為を念頭に置いており、キューバへの通商のための渡航も、GAESAによって行われる商行為ではなく、キューバ国民によって行われる民間の商行為のためだけに限定する。GAESAはホテル経営などを行っており、取引を禁じてキューバ軍に資金が流れないようにする。
新しい政策では、大使館を閉鎖するなど、両国の外交関係を完全に遮断するようなことには至らないものと見られる。オバマ前大統領は、キューバに民主主義が復活することを期待して、2015年に制裁措置を緩和して外交関係を復活させ、数十年にもわたる政策の大転換に踏み切った。
その結果、昨年は60万人以上の米国人がキューバを訪問したが、これは一昨年の数字を約74%も上回るものだ。多くの米国の農業・商業関係の企業がキューバで事業を展開しているか、今後の展開を希望しており、潜在的には年に数十億ドルの経済効果をもたらすものとして、制裁の解除なども期待されてきた。
制裁の解除を提唱する人々は、「キューバに対する懲罰的な手法では、50年以上の間、同国において人権の向上がもたらされることは全くなかった。何か新しいことを試す時だ。」と言っている。彼らはキューバ人と米国人の交流を増やすほど、そしてキューバ人が米国人の支援により、企業ベンチャーを形成する機会が多くなればなるほど、同国の政治システムを変更する圧力になるだろうと考えている。
政策の発表を行う南フロリダのマイアミは、キューバ系米国人が多く住む都市だ。トランプ政権は、同地のキューバ系米国人の共和党議員、マリオ・ディアス・バラート下院議員やマルコ・ルビオ上院議員などからの支援を受けて、新しい政策をとりまとめてきた。共和党の中にも、オバマ前政権の政策の見直しは、キューバが再びロシアや中国に依存する状態に逆戻りするとして懸念を示す議員もいるが、ルビオ上院議員などのキューバ系米国人議員は、オバマ前大統領がキューバの人権問題を十分に解決しないまま、国交回復を急いだとして批判している。
トランプ大統領は、昨年の大統領選挙期間中に、オバマ前大統領のキューバに対する貿易・渡航制限の緩和の決定は、見返りに何の譲歩もしない先方の術中にはまったと言っており、今年早くティラーソン国務長官も、トランプ政権は米国・キューバ関係の政策を「上から下まで」見直すと表明していた。キューバに対し厳しい姿勢を取るトランプ政権が新政策を発表すればキューバの反発は必至であり、今後両国関係の悪化は避けられないものと思われる。
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