この訴訟にはトランプ米大統領がすでに受け取っている、中国での事業関連で承認された商標や、トランプタワーのホテルの部屋代とイベント代金、テナントとして入居している政府系企業である中国商工銀行、アブダビ観光文化庁等からの賃料などがある。原告は少なくとも30人の米民主党上院議員と166人の米民主党下院議員からなる。この訴訟はトランプ米大統領に対するこの種の一連の訴訟の最新のものだ。憲法上の「外国からの報酬」条項は、米国の公職者が米議会の承認無しに外国政府から金品を受け取ることを禁じている。
トランプ米大統領の不動産事業会社である「トランプ・オーガナイゼーション」は、外国政府関連の顧客からの収入は米財務省に寄付するとしているが、同社はプライバシー保護の観点から顧客に対して身元を明らかにするように要請していない。このためトランプ米大統領のホテル等で外国政府関連の顧客からの収入は1ドルも寄付されない可能性がある。トランプ米大統領は大統領就任後、30億ドルにのぼる不動産事業の資産を信託に預け、2人の息子に事業の経営を委任しているが、持分は手放さなかった。この件で米政府倫理局局長から、これでは無意味と注意されている。米裁判所はこれまで大統領の報酬について定義する機会はほとんど無かったので、これはトランプ米大統領の事業活動が憲法違反となるかどうかを議論する上で重要な問題となる可能性がある。
トランプ米政権はこれに対し、トランプ米大統領の事業による収入は憲法に違反していないとし、これは政治的な動きによるものではないかと述べた。また米司法省はコメントを拒否したが、匿名の当局者はトランプ米大統領は訴状を受理するが、米司法省が裁判官に提訴の棄却を求めることを期待していると述べた。
米民主党下院議員の原告のリーダーであるコンヤーズ下院議員は、トランプ米大統領は少なくとも25カ国で利益相反があり、トランプ・オーガナイゼーションの利益を最大化するために米大統領職を利用していると述べた。同様の訴訟は、非営利団体、飲食店、貿易団体、メリーランド州とワシントンDCの司法長官によって最近数ヶ月にわたり提起されている。これらの原告はトランプ米大統領の企業を通じて外国と米国政府からの支払いを受け取ることは、他のホテルやレストランに不公平であり不利益をもたらし、トランプ系企業を利用する各国政府に特別待遇を与えるインセンティブとなると主張している。
ある専門家は議員が大統領を訴えることはめったにないので、議員が今回の提訴を行える法的立場を証明する連邦裁判所の判例はほとんどないと述べた。1997年の連邦最高裁判決では、原告の議員の数が決定的な影響力を持つほど多数ならば提訴できるとしている。米民主党は訴状でトランプ米大統領が納税申告書の提出を拒否していることも訴えている 。これは過去 40年の米大統領ではじめてであり、トランプ米大統領が株式を保有する中核企業と何百もの企業との複雑な関係が、現在外国からいくら収入を得ているか決定するとしている。訴訟が受け付けられれば米民主党は裁判に先立ち税務申告書の提出を求める可能性が高い。
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