6月11日・12日の2日間、イタリアのボローニャでG7(先進7カ国)の環境相会合が行われ、12日に、米国以外の6カ国が、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定の下で、各種の対策に取り組んでいくことを確認する共同声明を採択した。各国が配慮して、国内政策に合致する範囲内で温暖化対策を進めていくとの米国の立場が、文書の最後に脚注として示された。
気候変動に関する声明には、米国以外の6カ国が協力して、パリ協定の効果的な履行に取り組むことが記され、先進国が開発途上国に対し、2020年までに年1,000億ドルを支援する目標も再確認された。さらに協定は撤回できず、社会の安全や繁栄の鍵であるとして、決められた温室効果ガスの削減目標など、協定の再交渉を求めるトランプ政権を牽制した。ドイツ、フランス、イタリア等を中心に6カ国は、再交渉には強く反対している。...
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気候変動に関する声明には、米国以外の6カ国が協力して、パリ協定の効果的な履行に取り組むことが記され、先進国が開発途上国に対し、2020年までに年1,000億ドルを支援する目標も再確認された。さらに協定は撤回できず、社会の安全や繁栄の鍵であるとして、決められた温室効果ガスの削減目標など、協定の再交渉を求めるトランプ政権を牽制した。ドイツ、フランス、イタリア等を中心に6カ国は、再交渉には強く反対している。
米国からはスコット・プルイットEPA(環境保護局)長官が代表として参加したが、1日目の11日のみに参加して帰国した。トランプ大統領が約2週間前に、米国にとって経済的に不利益であるとして、パリ協定からの離脱を表明したことを受け、温暖化対策に関する共同声明には加わらず、「米国は、力強い経済と健全な環境の両方をともに維持し、国内の優先事項と整合する方法で、主要な国際パートナーと引き続き取り組む」という立場を表明した。
6カ国が先日のG7首脳会議でトランプ大統領を説得しきれなかったことに続き、今回も米国をパリ協定に引き留められず、溝の大きさが改めて浮き彫りになった。今後の温暖化対策への国際的な取り組みが停滞する懸念が持たれており、孤立した米国をどのように巻き込んで実効的な対策を進めていくかを考えていく必要がある。各国とも引き続き米国への働きかけを継続していくと見られる。
プルイットEPA長官は、トランプ政権ではパリ協定に最も批判的な人物の1人だ。今回のG7環境相会合の米国代表であったが、スケジュールが合わず、1日早く帰国した。長官は「経済成長と環境保護の両方に注力するとの米国の立場は、他国にきちんと理解された。」と帰国後報告している。また、「パリ協定だけが環境問題への取り組みを示す枠組みではない。」とも述べた。こうした長官の動きに対しては、国内の環境保護団体やメディアなどから厳しい批判がある。
EPAの報道官は、長官の日曜の帰国はもともと計画されていたもので、EPAの他の高官が、会議の残りの部分に出席したと説明したが、G7の他国から、代表者が帰国を早めたことへの失望と遺憾の意が表明されたと言われている。ワシントンで行われるトランプ政権で初の、閣僚全員が出席する会議のために早く出発したとされているが、僅か5時間しかG7環境相会議に参加しなかったプルイット長官は、イタリアに滞在中、ローマやバチカンを訪れたそうで、生ハムを試食し、パスタの生地を回転するなどの写真がネット上にアップされたとしてさらに批判されている。
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