北朝鮮は9日、敵の軍艦への強力な襲撃手段となる新型の地対艦巡航ミサイルの発射実験を行い、成功したと発表した。8日に東部の元山から飛翔体が発射されたのを、韓国軍が検知した1日後のことだった。
国営メディアである朝鮮中央通信によれば、金正恩委員長が発射に立ち会い、ミサイルは旋回しながら飛行した後、日本海上に浮かぶ標的の船を正確に検知してこれに命中した、としている。また9日付の党の機関紙・労働新聞の電子版が、発射や命中の瞬間などの写真を掲載した。実験では、超低空飛行の安定性や標的を正確に捕える能力などを確認し、新たに開発した発射台や準備態勢も検証した。北朝鮮は2015年に同様の実験を行ったが、その際には地対艦巡航ミサイルは僅か100キロしか飛ばなかったので、今回の実験では技術的な進歩が確認された。金委員長は実験結果を高く評価しているという。
韓国軍の発表では、ミサイルは約200キロ飛び、最高高度は約2キロだった。今週初めに終了した、米軍の空母カールビンソンやロナルドレーガンが韓国海軍との共同訓練を行った日本海の海域に落下したという。韓国軍は、発射は共同訓練に対抗するもので、北朝鮮のミサイルの多種多様性や、敵の船舶を正確に狙い撃つ能力を誇示する狙いがあると述べた。
「この新種の巡航ミサイルは、北朝鮮を攻撃しようと試みる、いかなる敵の艦隊をも地上から撃破する能力を持った強力な攻撃手段である。そして意のままに使用可能である。」と朝鮮中央通信は報じた。また8日のミサイルは、北朝鮮の建国の父である故金日成主席の生誕105周年を祝う4月15日の軍事パレードで初めて紹介されたものと説明した。韓国の聯合ニュースによれば、軍事パレードに初めて登場した武器は、ICBMを除いて全てが先月試されたとのことである。
今回の発射実験は、周辺諸国や米国に挑戦的なメッセージを送るものだ。一連の北朝鮮のミサイル実験は、韓国の文在寅新大統領にとって難しい課題を提供している。文大統領が対話を模索する意向を表明しているからだ。8日の打ち上げはこの1か月で5回目の実験となり、5月初旬の文大統領の就任以来、3発の弾道ミサイル、1発の地対空ミサイル、そして8日の巡航ミサイルが発射されたことになる。文大統領は、北朝鮮との融和政策の一環として、国境を越えた民間レベルでの交流を推進しようとしているが、北朝鮮は5日、国連の新しい制裁決議を韓国が支持していることに抗議し、韓国政府の承認を得て民間団体が進めていたマラリア予防に関する人道支援について、受け入れを拒否した。
また、もう一つ新たな火種となりそうなものとして、最近韓国で救助された北朝鮮の漁師4人の内の2人を、希望に応じて韓国に留まることを認めると文政権が発表している。北朝鮮への帰国を希望するもう2人の漁師は9日に本国に送還された。北朝鮮は韓国がそそのかしていると非難し、4人全員の送還を要求するものと見られている。文大統領は北朝鮮とどう向かい合うか、難しい決断を迫られている。
北朝鮮は、核弾頭を搭載したICBMをこの数年に開発する可能性があり、それはトランプ米大統領の海外政策で最大の懸念事項の1つとなっているが、トランプ政権は現在国内の政治問題に力を注がざるを得ない状況となっており、中国にもっと北朝鮮を抑制するよう求めている。
国連では、安全保障理事会の現在の議長である、ボリビアのサチャ・ロレンティ・ソリス国連大使が8日、記者団に対し、今回の発射実験に関する特別な会合の開催要求は受けていないと述べた。英国のマシュー・ライクロフト国連大使は、北朝鮮の挑発行動を非難し、「理事会のメンバーとともに、どのような対応がベストか考えたい。」と言ったが、北朝鮮に対する国連の制裁決議は、特定の核とミサイルの実験等を禁じており、定義された違反事項に該当しない可能性があると付言した。
安保理は2日、全会一致で、北朝鮮の核とミサイル計画に関連する14個人と4つの団体を、資産凍結や渡航禁止の対象リストに新たに加える決議を採択した。それは国連の制裁決議違反である、前回の弾道ミサイル発射実験に対応するものであった。EUは8日、この安保理決議に沿って制裁を強化している。
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