トランプ政権は、北朝鮮問題解決を優先するため、親中政策を取りつつあるが、こと中国の軍事力については脅威に感じている模様で、南シナ海含めたアジア地域での軍拡政策に神経を尖らせ、年次報告の中で強い懸念を表明している。一方、中国側はいつもどおり、米国が根拠もなく悪戯に中国の軍事力が脅威だと煽っていると厳しく非難している。
6月7日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『AP通信』配信):「中国、米国防総省の中国軍事力分析報告に噛みつく」
中国外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は6月7日、米国防総省が6月6日にリリースした年次報告の中で、中国が南シナ海の人工島を軍事拠点化しているとか、中国が海外に更に軍事基地を建設しようとしている等、“根拠のない分析報告”を公表したことについて“断固として反対する”と表明した。同報道官は、中国は常に、アジア太平洋地域、更には世界の平和と安定のために尽くしているとも付言した。
中国は目下、ジブチ(アフリカ東北部、紅海に面した共和国)に海外初の軍事基地を建設中であるが、アフリカの角と呼ばれるソマリ半島(アフリカ大陸東端の半島)にある米軍ルモニエール基地に近接している。中国側は、エデン湾の海賊退治、及び同地域における国連平和維持軍の活動への参加の拠点とするためと説明している。
なお、米国防総省の年次報告は、中国は長く友好関係にある国、例えばパキスタンなどに軍事基地を建設したり、また別の国には中国軍艦をしばしば寄港させることで、これらの国々を中国の勢力下に置こうとしているとも言及している。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』:「中国が“南シナ海島嶼を完全軍事拠点化”」
米国防総省の年次報告の中で、中国は既に、南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島内の人工島に、戦闘機用格納庫、滑走路、水・燃料貯蔵槽、大型港湾、通信施設、兵舎等を建設済みであると報じた。
同報告はまた、パキスタンやジブチで新たな軍事基地建設を進めているとも言及した。ジブチには米軍ルモニエール基地があるが、米軍高官は、側に中国軍基地が建設されることで脅威は感じないとしている。しかし、パキスタンについては、(パキスタンと国境問題を抱える)インドなどが中国の軍事展開を快く思っていない。
同日付ドイツ
『DW(ドイツ通信)』:「米国防総省報告、中国の海外軍事展開に懸念」
米国防総省は、毎年米議会宛に年次報告を提出しているが、6月6日リリースの今年版の中で、中国による南シナ海、パキスタン、ジブチ等での海外軍事展開について触れ、中国の軍事増強が世界の関心の的になっていると言及した。
また、同報告では、中国の実際の国防費が、公表値の1,400億ドル(約15兆4,000億円)を遥かに凌ぐ1,800億ドル(約19兆8,000億円)と分析されるとも報じられている。
これに対して中国外交部は、当該報告は“憶測”に基づく誇大表現だらけであり、中国の軍事については、国防費含めて“透明性が確保”されていることは明白である、と猛反発している。
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「中国、米国防総省の中国軍事展開計画についての報告は“無責任な内容”と酷評」
米国防総省の年次報告によると、中国が既に建設着手している国産空母は、2020年までには就役するとしている。また、中国が東・南シナ海において、“戦争に至らない程度の威圧”を継続的に仕掛けているとも報じた。
これに対して中国外交部の華報道官は、同年次報告は事実に基づかず、中国の主権擁護及び安全保障のための軍事政策について、無責任な表現を使用していると非難した。
一方、6月8日付中国
『チャイナ・デイリィ』:「米国、理由もなく中国を敵視」
米国防総省の年次報告は、中国が“威圧”しているとの表現を使っているが、南シナ海の領有権問題について、中国が目下フィリピン・ベトナムと対話を通じ、解決に向け努力している事実に目を背けている。
その他、多くの矛盾を含む報告がなされているが、そもそも米国は、国防に関わる“2018年予算請求”において、ロシア・イラン・北朝鮮とともに、中国を“仮想敵”と見做していることから、中国の国内外軍事政策について、偏見を持った見方をしていることは明らかである。
例えば、中国がジブチなどで進めている軍事施設の建設などは、災害時の救出、捜索、人道支援、海上交通の安全保障等、地域の平和に資する目的であるのに、それを意図的に曲解して軍事増強と騒ぎ立てている。
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