7日、韓国の大統領府高官は、北朝鮮からのミサイルの脅威に対抗するために配備を決定した米国のTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)の展開を、文在寅大統領が指示した配備地の環境影響評価が終わるまで一時中断すると発表した。
THAADは既に韓国南部で稼働しており、2基の発射台と早期警戒用のXバンドレーダーを備えている。同システムは6基の発射台で構成されるが、残りの4基は既に韓国に到着しているものの、まだ設置されていない。追加の4基については、新政府や国民に知らされることなく、配備場所に輸送された。
文大統領は、大統領府が4基の新しい発射台の到着を知らされていなかったことを明かし、その経緯の調査を命じるとともに、配備地の環境影響評価を指示した。...
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THAADは既に韓国南部で稼働しており、2基の発射台と早期警戒用のXバンドレーダーを備えている。同システムは6基の発射台で構成されるが、残りの4基は既に韓国に到着しているものの、まだ設置されていない。追加の4基については、新政府や国民に知らされることなく、配備場所に輸送された。
文大統領は、大統領府が4基の新しい発射台の到着を知らされていなかったことを明かし、その経緯の調査を命じるとともに、配備地の環境影響評価を指示した。ソウルの青瓦台の高官は7日、記者に対して「既に配備されたTHAADの2基の発射台は撤去する必要はなく維持するが、まだ配備されていない4基の発射台は、周辺の環境影響評価をするまで設置しない。」と語った。
THAADシステムの配備場所はソウルから200㎞余り南に離れた星州郡のゴルフ場で、3月に6基の発射台の内2基が設置され、4月末に公式に稼働を開始した。米軍の高官は、システムは既に稼働しており、北朝鮮のミサイルを迎撃する能力を備えていると語っている。配備場所の近辺では、このシステムが環境に被害を及ぼす可能性があるとして、地元住民が激しい抗議活動を行ってきた。
トランプ政権の当局者らは、今年の末までにシステムの配備を完了したいとしている。しかしながら、環境影響評価には最低1年はかかることが見込まれるため、完全配備はかなり遅れ、事実上中断されると見られている。北朝鮮が核やミサイルの開発を加速する中、迎撃態勢の整備に遅れが出ることは必至だ。THAADの6基の発射台はローテーションで使われる仕様のため、追加の4基の配備の遅れは、既に配備された2基の使用過多につながるが、技術上深刻な問題にはならないと見られている。
米国務省のアンナ・リッチーアレン報道官は、今回の韓国の決定について尋ねられ、「米韓両国は、同盟の問題について文政権と密接に協働している。今後も緊密に協力していく。」と語った。国防総省の報道官は「THAADの配備の決定が中止されることはないと思う。米国は韓国政府のスタンスを信用しており、配備は同盟国としての決定で、これを覆すことはできない。」と釘を刺した。THAADシステムの環境影響評価や国会の承認の取り付けなどは、文大統領の選挙公約であったが、抜本的見直しについてはどこまで実行されるのか不明だ。
今回の決定は中国に大きく譲歩する形となり、関係の悪化には一定の歯止めがかかるものと見られる。韓国は昨年、朴槿恵政権がTHAADの配備に合意したが、中国政府は自国の防衛への脅威としてこれに強く反対してきた。韓国への経済的な報復措置として、韓国行きの観光商品の販売を全面的に中止し、韓国企業に厳しい措置を取るなどしている。中国政府のこの問題に対する態度は頑なであり、先月、韓国の特使イ・ヘチャン(Lee Hae-Chan)氏が北京を訪問した際、習近平主席や王毅外相は譲歩する構えを見せなかった。
北朝鮮は8日朝再び、東部の元山から短距離の地対艦巡航ミサイルと思われる数発を、日本海に向けて発射したと見られている。韓国国内には、大統領府が環境影響調査を省略するほど至急の案件と見なさずに、時間稼ぎをしているような戦略を取っていることは、こうした北朝鮮の核やミサイルの脅威についての緊急性に対する米国や国際社会の認識を否定するものと考えられる可能性があるとし、米国との同盟の根幹を揺るがし、中国に対してはTHHAD撤回が可能という誤ったシグナルを送りかねないと懸念する見方もある。
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