日曜ロンドンで起きたテロを受け、米トランプ大統領はロンドン初のイスラム教徒の市長であるカーン氏が死傷者が出ているのに英国民に「怖がる必要はない」と軽視したとしてツイートで批判した。しかし市長は警備を強化した上で安心してほしいと訴えたのだと考えられており、背景を知らずに批判したトランプ氏が批判返しに合っているという。またトランプ氏はこのテロを受け、「ポリティカル・コレクトネス(政治的公正)」をやめ自国民の安全を強化すべき、イスラム教国からの入国阻止、そして銃規制にも言及しテロを政治利用しているとしてセレブからからも批判が広がっているという。
5月4日付英国
『BBC』は「ロンドンのテロ:サディク・カーン市長がトランプ氏の批判をはねつける」との見出しで以下のように報道している。
「土曜夜のテロ発生後、トランプ氏は英国を支援する旨のツイートをしたがその後、イスラム教国6か国からの入国阻止強化を求める発言をし、批判が起きた。日曜にはカーン市長が英国市民に「恐れる理由はない」と発言したことを批判。そのことで英国民の多くが憤っているという。カーン市長は配備する警官を増員しきちんと治安対策をした上で、心配はないと述べたまでのこと。市長の報道官は、意図的に文脈と違う捉え方をするトランプ大統領に反応するより大切な事がある、市長はテロ発生を受け警察や救急、政府機関との調整や指示、市民や訪英外国人への対応に多忙である等と述べている。
また、トランプ氏は、「ポリティカルコレクトネス(政治的公正:差別を避けること)もやめ、安全を強化すべきとき等とも述べている。
これまでも両氏は対立しており、昨年の米大統領選期間中にはトランプ氏がイスラム教国からの入国阻止を提案した際、イスラム教徒初のロンドン市長となったカーン氏は例外だと発言したが、カーン氏はその寛大な申し出を拒否する発言をした。また以前カーン氏は、トランプ氏が「イスラムにつき無知なために英米を危険にさらしている」と発言。それに対しトランプ氏は「カーン氏はIQテストすべき」とし、この侮辱発言を忘れないとしていた。」
同日付英国
『インディペンデント』は「ロンドン橋でのテロを受け、トランプはカーン市長や“ポリティカル・コレクトネス(政治的公正)″を批判」との見出しで次の様に報道している。
「テロはロンドン橋上で起き、白いワゴン車が歩行者をはねてから8分後に現場に到着した武装警官がナイフをもった容疑者らの車を銃で撃った。報道によると、男らは車から降り、近くにいた歩行者をナイフで刺し始めたという。
今朝カーン市長は英国がテロに屈しないを証明して見せるため、 総選挙は予定通り木曜に行う、我々の生活は民主主義によって成り立っているのだ等と述べた。また、選挙は素晴らしい、テロリストが忌み嫌う物の一つ等とした。トランプ氏のカーン市長批判は、英米の間を険悪なムードにしたが、3月のウェストミンスターで起きたテロ後に、息子のドナルド・トランプ・ジュニアがSNSで文脈を無視しカーン氏を批判したこともあった。」
同日付英国
『デイリーメール』は「ロンドンテロ発生たった数時間後に市長をツイートで批判したトランプ氏がセレブ達から激しい非難を浴びる」との見出しで次の様に報道している。
「英米のセレブの間でカーン市長を批判したトランプ氏の批判が起きているという。またこの機会を利用し、大統領選での元ライバル、ヒラリー・クリントン氏はツイートで、カーン市長支持を表明し、「言葉もない残酷で卑劣なテロの後、ロンドンや英国の市民は不安にあえぐことより決意を固めたのだ。米国のあなた方の友より」と述べている。
JKローリング、ジョージ・タケイ(2世俳優)、ケイティ・クーリック等のセレブたちがツイッターを使いトランプ氏の経緯を無視した発言を批判している。コメディアンのタケイ氏は、(市長が)「恐れる理由はないと言ったのは、今後数日間の警察の警備を強化したからだ。早とちり野郎、落ち着け。」とコメント。ブロガーでユーチューバ―の企業家ハンク・グリーンは、「ロンドン市民は今日以降、警備が強化されたのを知っている。恐れる必要はない」と市長の言葉の背景を知るべきだとコメント。
テロは土曜夜、ワゴン車に乗った身元不明の3人のジハーディストがロンドン橋上で80キロ程のスピードで人混みに突っ込んで起きた。偽物の爆弾チョッキを着た3人が車から降り、30センチほどの刃物で通行人に「アラーのために」と叫びながら襲いかかったという。その後飲食店やバーがたちならぶ夜の街「バラマーケット」へ移動、緊急通報を受けた武装警官が事件発生から8分後に現場へ駆けつけ、3人の容疑者を射殺したという。
トランプ氏はカーン市長を批判したのみならず、テロを米国の政治政策に利用しようとまでした。このテロで銃規制の問題が浮上していないとし他、イスラム教国からの入国阻止の必要性を強調した。この政治公約を英国支援の前に述べた姿勢にセレブからも批判があった。
英国作家のサマンサ・シャノンは、「銃について、もし英国民に多量の銃が必要だと言いたいのなら、ご心配無用です。もう放っておいて」と述べ、スコットランドの作家ジョン・ニーブンは「NRA(全米ライフル協会)は銃が身を守るというが、過去3回ロンドンで起きたテロの犠牲者を合わせても米国内で毎週銃で亡くなる人の方が多い」と指摘し「テロリストはナイフと車を使った、何故なら銃が手に入らなかったからだ。」と述べている。俳優のクナル・ナイヤールは「(テロ犯が)1分間に100発撃てるセミオートの半自動小銃を使っていたらどうなっていたかと想像してみたまえ。」という。
一方トランプ大統領を恥じている米国人もいる。俳優のジョシュ・ガードは「多くの米国人は恥と思っていることを知ってほしい。恥と怒りでうんざり。米国イコールトランプではない。これが私たちの共通認識だ」と述べている。」
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