国連の安全保障理事会は、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を相次いで実施している事態を踏まえ、米中両国が提案した新たな制裁決議案について、2日に採決を行う。本制裁案は、北朝鮮の核・ミサイル開発計画を完全に終わらせることを要求するとともに、資産凍結と渡航禁止の制裁対象に同国の4組織と14名の個人を追加指定するものである。
6月1日、北朝鮮の核や弾道ミサイルの開発計画について米国は、新たな制裁決議案を国連の安全保障理事会に提出したと外交筋が明らかにした。決議案の文言は、北朝鮮にとって唯一の同盟国である中国と合意の上でドラフトされている。
今回の決議案は、「最も強い言葉で」北朝鮮の度重なる核実験および弾道ミサイル発射実験を非難しており、安保理は北朝鮮に対し「全ての核兵器と既存の核開発計画を、完全に、検証可能な形で、不可逆的な方法で放棄」し、全ての弾道ミサイル発射実験を終わらせることを要求している。...
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6月1日、北朝鮮の核や弾道ミサイルの開発計画について米国は、新たな制裁決議案を国連の安全保障理事会に提出したと外交筋が明らかにした。決議案の文言は、北朝鮮にとって唯一の同盟国である中国と合意の上でドラフトされている。
今回の決議案は、「最も強い言葉で」北朝鮮の度重なる核実験および弾道ミサイル発射実験を非難しており、安保理は北朝鮮に対し「全ての核兵器と既存の核開発計画を、完全に、検証可能な形で、不可逆的な方法で放棄」し、全ての弾道ミサイル発射実験を終わらせることを要求している。
また決議案の付帯文書では、世界中の資産の凍結や、渡航の禁止などの制裁対象として、ミサイル開発計画に関与したとされる北朝鮮の14名の個人と4団体を追加している。これには軍事上の資金調達に関与した高麗銀行や企業幹部、朝鮮人民軍の戦略ロケット部隊のほか、北朝鮮の海外諜報活動のリーダーと思われる人物などが含まれている。
米国は5週間前から、北朝鮮のミサイル発射実験への対応で中国と新たな制裁の可能性について協議を続けてきたが、ニッキ・ヘイリー米国連大使は、1日、米中両国が週末までに新たな制裁について合意に達すると考えていると語っていた。両国は同日中に合意に達し、安保理の他の13理事国に制裁の決議案を回付した。ある安保理の外交官は「中国は決議の文案に同意した。本決議案は採決に向けてかなり速く動いていくだろう。安保理で拒否権を持つ5常任理事国、英・中・仏・露・米のいずれも決議を妨害すると脅したりはしていない。」と述べた。
同決議案は、トランプ米大統領が1月に就任して以降、米中間で合意した初めての安保理の対北朝鮮制裁案である。北朝鮮は昨年初めに、米国本土まで到達する核弾頭を搭載したミサイルの開発を宣言して以来(トランプ大統領は実現させないと約束したが)、2回の核実験と十数回のミサイル発射実験をしている。安保理は、5月に行われた発射実験の後、追加制裁を行うと北朝鮮に圧力をかけていた。今回の採決の実施は、北朝鮮がこれまでの国連の制裁を無視することへの安保理の怒りを表しているとも言える。
一方、米国財務省は1日、北朝鮮の兵器開発を支援したとしてロシアの2社を含む9の企業および政府機関と3名の個人を新たに米国独自の制裁対象に追加した。
ロシアのセルゲイ・リャプコフ外務次官は、ロシアは米国の決定に困惑し驚いているとして、「何らかの報復的措置を用意している。」と述べたとロシアのメディアが報じている。今のところ、拒否権を持つロシアが制裁決議に反対したり、これを骨抜きにすることを求めたりするなどの対応を取るとは言っていない。但し米国が主導する北朝鮮対策に加わることは、自らの立場を複雑化する恐れがある。ロシアと北朝鮮間の貿易が増加している確たる証拠はないが、ビジネスや交通のつながりは拡大しているからだ。
今回の独自の制裁対象には、コンピュータのハードやソフトを開発している北朝鮮国営企業の朝鮮コンピュータセンター(KCC)が含まれている。同国の国営メディアによれば、平壌に本拠を置き、ドイツ、中国、シリア、アラブ首長国連邦(UAE)などに拠点を構えている。
韓国政府の情報によれば、北朝鮮の高麗銀行は、北朝鮮幹部の秘密資金を管理する団体のため海外の取引をしていると言う。高麗銀行とその子会社である高麗信用開発銀行は、昨年既に米国財務省によって制裁対象となっている。
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