トランプ大統領は、脱退の理由を「米国と米国民を保護するため、パリ条約から離脱する。」と述べた上で、「米国は、他国より不利な条件で協定を締結した。」とし、新たに公平な条件について交渉を開始することも示唆した。
このトランプ大統領の決断は、ロシアゲート疑惑等により、低迷する支持率を底上げするため、コアな支持者向けに選挙公約を守ることを優先したものと考えられる。
パリ協定については、2015年12月に、195ヵ国が合意し、現在146ヵ国が批准している。...
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トランプ大統領は、脱退の理由を「米国と米国民を保護するため、パリ条約から離脱する。」と述べた上で、「米国は、他国より不利な条件で協定を締結した。」とし、新たに公平な条件について交渉を開始することも示唆した。
このトランプ大統領の決断は、ロシアゲート疑惑等により、低迷する支持率を底上げするため、コアな支持者向けに選挙公約を守ることを優先したものと考えられる。
パリ協定については、2015年12月に、195ヵ国が合意し、現在146ヵ国が批准している。この146ヵ国の温暖化ガスの排出量は、世界全体の排出量の約80%を占める。
また、温暖化ガス排出量の多い国別では、1位中国23%、2位米国17%、3位ブラジル8%、4位インド6%、5位ロシア6%となっており、今回、2番目に排出量が多い米国が、パリ協定から離脱することは、温暖化対策の枠組み自体の形骸化につながる恐れがある。
オバマ前政権は、地球温暖化ガスの排出量を2025年までに、2015年比26~28%削減すると表明していた。
結局、米国の離脱により、世界でパリ協定で参加していない国は、シリア、ニカラグア、米国の3ヵ国のみとなった。
一方、EUと中国は、6月2日、ベルギーで首脳会議を開き、パリ協定の重要性を確認し、共同声明を出す予定である。
ただし、パリ協定には、削減目標を達成しなかった場合の罰則規定がなく、再生エネルギーへの転換や温暖化ガス排出量の削減等がどこまで履行されるかとの疑問は残る。
しかし、1番の問題は、米国が、自らを中心とした世界協調体制の枠組みから外れること自体にあり、これからの世界が不安定になるのではとの懸念を抱かせたことにあると考えられる。
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