ドイツのメルケル首相は、28日、ミュンヘンで行われた支持者の集会で演説し、「我々が他国を全面的に信頼できる時代は終わった。」として、トランプ大統領の米国と欧州が乖離していく状況を示し、欧州人は自分たちの運命を自ら決めていかねばならないと述べた。
バイエルンのビールテントで行われた集会で、2,500人ほどの聴衆を相手に演説したメルケル首相は、最近の国際サミットにおける経験を語り、第二次世界大戦後に築かれてきた欧米諸国の信頼関係について、「我々が他国を完全に頼りにできる時代は、ある程度終わった。私はこの何日かの間にそれを感じた。それゆえ私が言えるのは、我々欧州人は自分たちの手でその運命に対処しなければならない、ということだ。」と述べ、トランプ政権の米国と欧州が乖離していく状況を、これまでになく強く示した。...
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バイエルンのビールテントで行われた集会で、2,500人ほどの聴衆を相手に演説したメルケル首相は、最近の国際サミットにおける経験を語り、第二次世界大戦後に築かれてきた欧米諸国の信頼関係について、「我々が他国を完全に頼りにできる時代は、ある程度終わった。私はこの何日かの間にそれを感じた。それゆえ私が言えるのは、我々欧州人は自分たちの手でその運命に対処しなければならない、ということだ。」と述べ、トランプ政権の米国と欧州が乖離していく状況を、これまでになく強く示した。
トランプ米大統領は初の外遊となる中東・欧州歴訪で、25日にブリュッセルで開催されたNATO首脳会議では、加盟国が防衛費を十分に支出していないと圧力をかけた。26-7日にイタリア南部のシチリア島タオルミナで開催された先進7か国(G7)首脳会議では、ドイツを名指しして貿易黒字を非難し、気候変動に関する対策の国際的枠組である「パリ協定」について、離脱の一歩手前である姿勢を示すなど、米国と欧州はことごとく対立し、メルケル首相は直後の記者会見では、「非常に不満」などと語っていた。
G7首脳会議では、トランプ政権の「アメリカ第一主義」政策にも係わらず、首脳たちは、テロ対策、反保護主義、北朝鮮対策、ウクライナ紛争に関してロシアにさらなる制裁を課す可能性等について合意したが、気候変動や難民危機の問題においては対立し、合意に至らなかった。
温暖化防止を目的とした2015年の「パリ協定」の内容を履行していくことについては、G7中6か国が同意したが、米国が他国と別のスタンスを取った。トランプ政権は、米国の温室効果ガス排出枠が中国・インド他の国々より厳しいことに、かねてから疑問を抱いており、米国ビジネスが不利を被るとして反対している。トランプ大統領は、離脱の決断に時間が必要として、27日にシチリア島から、来週最終的な決定をするとツィートした。
メルケル首相は25日、NATOの首脳会議の前にオバマ前米大統領と会談している。オバマ氏と同様にメルケル首相は、西側先進国では、英国のEU離脱(Brexit)運動やトランプ大統領の政策に代表されるナショナリズムの動きに対し、明確に反対の立場を取っている首脳の一人だ。
28日のミュンヘンでの演説でメルケル首相は、英国・マンチェスターのコンサートで先週発生したテロについて触れ、英国との結束を表明した。トランプ政権の米国、EUからの離脱を決めた英国、ロシアを含む他の国々と友好的な関係を維持するとした上で、「我々は欧州人としての自らの将来と運命のために戦っていかなければならないことを知る必要がある。」として、欧州が独立独行で進む必要もあると訴え、今後EU内ではフランスと協調していく考えを明らかにした。
もしメルケル首相の政党が今秋のドイツの総選挙で勝利すれば、メルケル首相は四選されることになる。メルケル首相は自分を囲んだ支持者と同じように、ジョッキに注がれたビールを飲み、演説を締めくくった。
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