米国防総省ミサイル防衛局は26日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)攻撃を想定した初めての迎撃実験を30日に実施する予定であることを明らかにした。北朝鮮が弾道ミサイルの開発を加速し、米本土に到達する能力を持つICBMの完成が近づいていると見られているが、そうした脅威に備え、ミサイル防衛力の強化を図る狙いがあると見られる。
ミサイル防衛局のクリストファー・ジョンソン報道官によると、西太平洋のマーシャル諸島のクェゼリン環礁にある弾道ミサイル防衛試験場から、ICBMを模した標的弾を発射し、これを米西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から地上配備型迎撃ミサイル(GBI, ground-based interceptor)を発射して、太平洋上で撃墜する計画であると言う。
「これまでのミサイル迎撃計画が進展し、高度化するにつれて、我々は次第に実験のシナリオを複雑なものにしてきている。...
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ミサイル防衛局のクリストファー・ジョンソン報道官によると、西太平洋のマーシャル諸島のクェゼリン環礁にある弾道ミサイル防衛試験場から、ICBMを模した標的弾を発射し、これを米西部カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から地上配備型迎撃ミサイル(GBI, ground-based interceptor)を発射して、太平洋上で撃墜する計画であると言う。
「これまでのミサイル迎撃計画が進展し、高度化するにつれて、我々は次第に実験のシナリオを複雑なものにしてきている。ICBM型の脅威がその過程における次のステップとなる。」とジョンソン報道官は述べた。国防総省は様々なミサイル防衛システムを所有しているが、ICBMを想定したものは、おそらく最も技術的に難易度が高い。専門家はまた、迎撃の信頼度が最も低いものとなると見ている。
ジョンソン報道官によると、1999年以来、中距離弾道ミサイルなどを対象にGBIの実験を17回実施し、9回成功していると言う。前回は2014年6月に行い、これも成功した。但し、その前は3回連続で失敗するなど、精度は必ずしも高くない。ICBM級を想定したGBIによる迎撃実験は初めてで、より正確なシミュレーションを行うことが目的だ。
米国は米本土に対する弾道ミサイル攻撃に備え、GBIをアラスカ州の基地に32基、カリフォルニア州おバンデンバーグ基地に4基、計36基配備している。2017年末までに44基まで増強される予定だ。トランプ米大統領は、就任早々ミサイル防衛の強化を主張し、マティス国防長官も今月5日に、米本土やイージス艦など世界各地のミサイル防衛体制を強化すると述べた。これに関する報告書が年内にも出される予定である。
このミサイル防衛システムは、元々ロナルド・レーガン大統領が1983年に、数十億ドルの予算を投じて「スターウォーズ計画」として推進した構想から出発し、発展している。当時は冷戦下でのソ連の弾道ミサイルの脅威を想定したものだったが、昨今の状況から、北朝鮮、あるいはイラン等を想定したものとして、その性格が変化してきている。
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、米国本土に到達する能力を持つ核ミサイルの開発・配備を宣言しており、ICBMの発射実験はまだ実施していないが、この流れを加速していると国防総省当局は見ている。米国では、こうした北朝鮮によるミサイルの脅威が増大している情勢を受け、議会でも防衛システムの増強を求める声が高まっているが、多額の予算が必要なので、反対意見も多い。
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