米国務省は15日、シリアのアサド政権が首都ダマスカス郊外にある軍刑務所内に、勾留中に殺害した数千人もの遺体を処分するため、大規模な火葬場を建設しているとの見方を示した。同刑務所内で日常的に行われている大量処刑を隠蔽する狙いがあるとして非難している。
国務省は、ダマスカスから北へ車で45分ほどのところにあるサイドナヤ軍事刑務所の建造物の中に、火葬場用に一部改造された建物があることを示した商業衛星写真を公開した。2013年から数年間にわたって撮影された写真は、建物が火葬場であると断定するものではないが、そのような施設と一致した構造を示していると言う。
記者会見した中東問題担当のスチュアート・ジョーンズ国務次官補代行は、サイドナヤ刑務所では毎日最大50人が処刑されていると指摘し、火葬場とする建造物の衛星写真を示し、刑務所で行われている処刑の証拠を隠蔽するのが目的との見方を示した。...
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国務省は、ダマスカスから北へ車で45分ほどのところにあるサイドナヤ軍事刑務所の建造物の中に、火葬場用に一部改造された建物があることを示した商業衛星写真を公開した。2013年から数年間にわたって撮影された写真は、建物が火葬場であると断定するものではないが、そのような施設と一致した構造を示していると言う。
記者会見した中東問題担当のスチュアート・ジョーンズ国務次官補代行は、サイドナヤ刑務所では毎日最大50人が処刑されていると指摘し、火葬場とする建造物の衛星写真を示し、刑務所で行われている処刑の証拠を隠蔽するのが目的との見方を示した。
ジョーンズ氏は、同刑務所では内戦が本格化してからの4年間で最大約1万3,000人もの人が死亡し、トラックで集団墓に埋葬するために遺体を運んだとする、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルが2月に発表した報告を引用した。西側の監視機関は、シリアの刑務所で大量処刑が行われている証拠を保有しているとしていたが、これまでのところ火葬場の使用に関しては具体的に言及してこなかった。
これに対しシリア外相は16日(火)、米国の非難を「嘘」と「作り話」だと強く否定している。軍事攻撃の口実として虚偽の主張を行う米国のこれまでのやり方であるとして、シリアへの米国の介入を正当化する「新手のハリウッド流の筋書き」であり、「樽爆弾や化学兵器の使用に関する誤った記録に加えて、サイドナヤ刑務所のいわゆる火葬場に関する米国のシリアに対する批判は、全面的に誤りである。」と述べた。
トランプ政権は、この反論が行われた時、約40万人が死亡し、人口の半分が6年の内戦によって国外に退去したと言われるシリアについて、今後の対応策を検討していた。大統領は同日、中東での紛争、難民問題、イスラム国との戦い等について議論するために、ホワイトハウスでトルコの大統領と会談した。
また米財務省は、5人のシリア人と5社のシリア企業が米国で保有している資産を凍結し、シリアの「民間人に対する情け容赦のない攻撃」に対抗し、米国人が彼らと金融取引を行うことを禁じた。その中にはアサド大統領のいとこ達も含まれている。
国連のステファン・デュジャリック報道館は、16日、拘束された何千人もの人々が残虐な扱いを受けていると言われる、シリアの刑務所や拘束施設を訪問する要求を、同国に繰り返ししているが拒否されているとして、米国の報告を中立の立場で確認することができないと述べた。しかし「様々な国連機関が、シリアにおける人権侵害について定期的に報告している。」とも語っている。
そうした中シリアでは、最近政府軍が、ロシア・トルコ・イランによる仲介で安全地帯として保護された地域への攻撃を拡大していると報じられている。英国のシリア人権監視団が、2人の女性がダマスカス郊外でロケット弾により死亡、もう1人がホムスで空爆により殺される等、死者が出ていると述べた。ホムスでは、爆撃は合意以来緩和されたものの、決して完全には止まらなかったと言う。
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