特にシリアで停戦地域を設けようと考えられてきたアスタナ会議での和平合意については、トランプ大統領も称賛していて、ロシア、イラン、トルコの三カ国の協力が不可欠であると述べている。しかし、アスタナの和平合意にはいくつか疑問点が残っているのも事実である。
第一に、この停戦地域というのは、これまで残虐行為を散々繰り返してきたアサド政権を実質支援してきたロシアとイランが中心となって監視およびパトロールを行う、という点が挙げられる。...
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特にシリアで停戦地域を設けようと考えられてきたアスタナ会議での和平合意については、トランプ大統領も称賛していて、ロシア、イラン、トルコの三カ国の協力が不可欠であると述べている。しかし、アスタナの和平合意にはいくつか疑問点が残っているのも事実である。
第一に、この停戦地域というのは、これまで残虐行為を散々繰り返してきたアサド政権を実質支援してきたロシアとイランが中心となって監視およびパトロールを行う、という点が挙げられる。そして、この和平合意の規定を破ったとしても特別な罰則がないために、ロシアやイランがもし停戦地域で空爆や爆撃を行ったとしても「ISの仕業である」と言い逃れをする機会を与えてしまう可能性があるといえる。そして今までも同じような「言い逃れ」の行為が度々繰り返されてきた。
反政府組織の関係者も「この停戦地域の取り決めはロシアがアメリカをいいように利用するための罠にしか過ぎない」との見解を述べている。そして今トランプ政権がその罠にはまろうとしているのではないか?とのことである。
トランプ大統領も「ロシアにはアサド政権の残虐行為を止めさせるためには協力してもらう必要がある。」と主張しているが、実際はロシアにうまく協力を呼びかける方向には進んではいなく事態は改善していない。
オバマ政権時のシリア問題担当特別顧問だったフレデリック・ホフ氏も「ロシアがもしアメリカに協力しなければ、4月のアサド陣営の飛行場空爆のようなことが再び起きるということを認識させる必要がある。」と主張している。
またホフ氏は続けて「アスタナの合意だけでは停戦地域以外の安全性は保障されていないため、それ以外の地域では今後も残虐行為が繰り返され、シリア紛争はますます泥沼化するのではないか。」と述べ、シリアの先行きを懸念しているとみられる。
しかし、現状ではロシアには様々な選択肢が残されていて、アスタナ合意の抜け穴を巧みに使って軍事行動に出る可能性もあり、実質「何をしでかすか分からない」状態である。
レックス・ティラーソン国務長官も現在ロシアの動向を探っているようで、「本当にロシアは残虐極まりないアサド政権と同盟関係を続けていきたいのか?」と問い続けているようだ。
オバマ前大統領とオバマ政権時のジョン・ケリー前国務長官もロシアの意図を何年にもわたり探ってきたものの、結局シリア問題の解決の糸口はつかめずじまいに終わった。
トランプ政権は今のところロシアとはシリア問題では対決する方向に向かっているが、今後シリアの行く末がどのようになるのかは、トランプ大統領の手腕にかかっていると言える。
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