トランプ米大統領により5月9日、10年の任期の4年目で解任されたコミー米連邦捜査局(FBI)長官の解任の経緯等について5月10日
『Reuters』、
『The Washington Post』、
『CNN』等各社が報じている。この問題に詳しい米議会筋によれば、トランプ米大統領により5月9日に解任される前に、コミー米FBI長官は米上院諜報委員会から2016年米大統領選挙へのロシアの関与についてのスピードアップを図るよう要請された後、最近、米司法省にロシア問題調査の捜査拡大のための予算増額を求めていたと述べた。これを米司法省は否定している。またコミー米FBI長官の側近筋によれば、解任理由は2016年米大統領選挙へのロシアの関与が進む中でコミー米FBI長官がトランプ米大統領に個人的な忠誠心を示さなかったとの情報も有る。
コミー米FBI長官解任への非難に対し、トランプ米政権は2016年米大統領選挙へのロシアの関与について捜査によるものでなく、2016年の米大統領選挙期間中にクリントン候補のEメール問題の捜査を行うなど、仕事がうまくこなせなかったためとし、セッションズ米司法長官の助言を受け大統領就任直後から検討していたとしているが、この解任は大統領就任直後問題となった米大統領選挙期間中のトランプ候補陣営とロシアとの関係をめぐる疑惑を呼び覚ました。
米民主党は、コミー米FBI長官解任がFBIの調査を弱体化させたとし、独立した調査を行うよう5月10日要求した。米民主党のシュメル上院議員は、ロシア問題について特別検察官を任命すべきと主張し、トランプ米大統領候補の顧問時代、駐米ロシア大使と2016年に面会していたにも関わらずその事実を否定していたセッションズ米司法長官が、ロシア問題を調査している最中にコミーFBI長官の解任に関与した理由について述べるべきだとした。今回の解任はウォーターゲート事件の最中1973年にニクソン米大統領が特別検察官、司法長官、司法副長官を同時に解任した「土曜日の夜の大虐殺」との類似を指摘する声もある。
1月の報道によれば米国諜報機関はプーチン露大統領がトランプ候補を支援するため、2016年の米大統領選挙を混乱させ米民主党の電子メールをハッキングし漏洩させたと結論付けた。しかしロシアは米大統領選挙への干渉を否定している。またトランプ米政権はロシアとの共謀を否定している。
米大統領とFBI等の情報機関、米司法省の関係の概要は以下の通りである。トランプ米大統領により長官が任命されるFBIはトランプ米大統領とロシア問題の調査に関する情報収集で最も大きな役割を果たしており、他の諜報機関よりも米国市民を調査する権限が広い。FBIの調査結果は司法省の幹部に送られ、一部の情報は議会にも送られる。
FBI長官は調査の規模や範囲などの内容を決定する強大な権限を持ち、議会の質問に協力や拒否することができる。他の諜報機関も情報収集の役割を担うが外国に焦点を当てている。米国家情報長官は米中央情報局(CIA)や米国家安全保障局(NSA)を監督している。これら関係者は司法省にすべての調査結果を報告するのでなく、また裁量や令状に応じて議会に情報を報告する。FBIと同様、これらの高官は調査に必要な予算、人員等を少なくしたり、議会との協力を最小限に抑える裁量を持っている。
トランプ米大統領により長官が任命される司法省はFBIの調査により明らかにされた証拠に基づいて、刑事告訴や起訴することができる。調査の指揮者は大きな裁量権を持つので、不正行為を行った者が直面する問題を隠蔽して影響を最小限に抑えることができる。しかし、徹底した証拠があれば、相当な政治的なプレッシャーがあるので別である。
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