米テキサス州のグレッグ・アボット知事は5月7日、不法移民に寛容な、いわゆる「聖域都市」を認めない法案に署名した。これにより警察が何らかの理由で身柄を拘束した人に対して、職務質問の間に在留資格について尋問すること、警察や郡の保安官等に対し、連邦の移民当局への協力を強制すること等が可能となる。
アボット知事は日曜の夕方、事前の予告なく、フェースブックの動画配信サービス「フェースブックライブ」上で署名の模様を中継で伝えたが、反対者の動きを封じるためであったと批判されている。同知事の広報責任者であるジョン・ウィットマン氏は、ソーシャルメディア上で署名したのは、多くの人がニュースを目の前で知ることができるからであると語った。
この法案は、犯罪者として逮捕される場合でも、単に交通違反で停止させられる状況であっても、警察によって身柄を拘束されたのであれば、いかなる人に対しても、警察が在留資格の有無について尋問することを可能としている。...
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アボット知事は日曜の夕方、事前の予告なく、フェースブックの動画配信サービス「フェースブックライブ」上で署名の模様を中継で伝えたが、反対者の動きを封じるためであったと批判されている。同知事の広報責任者であるジョン・ウィットマン氏は、ソーシャルメディア上で署名したのは、多くの人がニュースを目の前で知ることができるからであると語った。
この法案は、犯罪者として逮捕される場合でも、単に交通違反で停止させられる状況であっても、警察によって身柄を拘束されたのであれば、いかなる人に対しても、警察が在留資格の有無について尋問することを可能としている。また、警察関係者や郡保安官は、連邦の移民当局の要請に従って犯罪容疑者の身柄を拘束し、場合によっては強制送還する等しなければならない。もしこれに反した場合には、彼ら自らが逮捕されたり、公職を失ったりする可能性もある。
トランプ米大統領は、自身の強硬な移民政策に反対する聖域都市を激しく非難し、連邦の移民当局への協力を拒む州や都市に対する補助金を削減する大統領令に署名したが、訴訟による争いとなっており、連邦裁判所の判事がその効力を停止させている。今回のテキサス州の法案は、米国中で最も移民に厳しいものとして強い反対があり、人権保護団体等の反対勢力は、やはり訴訟や住民投票等で争う姿勢を見せている。
また、テキサス州内の大都市であるダラスとヒューストンの警察トップが前週共同で声明を発表し、同法案は効果的な移民政策ではなく警察にとっては大きな負担となること、不法移民を雇う企業への対策の方が重要であり、市民の信用も失うことになる、などと指摘していた。
テキサス州には今のところ、聖域都市であると正式に宣言している都市はないが、同州は米国で2番目に人口が多い州であり移民も非常に多い。法案について州内で抗議デモも相次いでいたが、多数派の共和党が民主党の反対を押し切った。法案の反対者は、中南米系の移民等のマイノリティーの人々が人種差別に基づく強制捜査の対象となる可能性があるとも批判している。
アボット知事は、「多くの人々が米国に移住してくる理由は、我が国が法治国家だからだ。テキサス州はその精神を体現している。」と語った。知事は同様の法案を策定したアリゾナ州について触れ、今回の法案の主要条項の内容は、既にアリゾナの例を通じて裁判所で判断されており、警察に在留資格について尋問させる条項等は認められていると言っている。
テキサス州とアリゾナ州の法案は同じではない。アリゾナ州では警察に通常の職務質問の間に人々の在留資格を判断するよう求めている。テキサス州の法律は、警察官に尋問するよう命じておらず、たとえ逮捕されていない状態にあっても、ある人がこの国に合法的に滞在しているのかを聞くことを許している。
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