国際社会の目は、今や北朝鮮に釘づけである。すなわち、北朝鮮の核・ミサイル開発を米国がこれまでにない強硬な対応を以て阻止しようとしており、武力衝突が起きるのか、起きた場合の日韓他周辺国に及ぶ影響はどれ程か、一方、北朝鮮の同盟国の中国はどう対応するのか等々の話題で持ちきりである。しかし、そうしたニュースを尻目に、南シナ海において、中国の威圧的行動並びに一方的開発推進活動、また、その中国と付かず離れずのフィリピンの対応と、事態は止まることなく動いている。
4月17日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「更に多くの中国公船が加わってマレーシア政府に圧力」
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)傘下のアジア海洋問題透明性部会が今月、中国の沿岸警備隊(中国海警)の警備船3隻が、昨年12月から今年2月の間、60日以上にわたりマレーシアのボルネオ島沖に居座って、領有権問題で争うマレーシアを威圧していると発表した。
2013年頃から中国漁船がマレーシアの排他的経済水域(EEZ)内に出没し始め、2016年3月には、中国海警の警備船に守られて100隻余りの中国漁船が侵入している。...
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4月17日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「更に多くの中国公船が加わってマレーシア政府に圧力」
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)傘下のアジア海洋問題透明性部会が今月、中国の沿岸警備隊(中国海警)の警備船3隻が、昨年12月から今年2月の間、60日以上にわたりマレーシアのボルネオ島沖に居座って、領有権問題で争うマレーシアを威圧していると発表した。
2013年頃から中国漁船がマレーシアの排他的経済水域(EEZ)内に出没し始め、2016年3月には、中国海警の警備船に守られて100隻余りの中国漁船が侵入している。
マレーシアのナジブ・ラザク首相は、領有権争いで中国と対峙しようとしているが、一方で、マレーシアにとって中国は最大の貿易相手及び投資元であることから、余りに強硬な姿勢はとれないでいる。
更に、ナジブ政権にとって2018年末に総選挙を控えており、現在同国が抱えたインフレや消費低迷問題に対応するため、世界第2位の経済規模を誇る中国との関係継続は必要不可欠な話である。
すなわち、中国は最近、自国の方針に逆らったり、気に入らない対応を取る国々、例えば韓国・台湾や欧州の何ヵ国かとの経済関係を露骨に減少させているが、一方、中国方針に従順な対応を示したブルネイやフィリピンに対しては、経済支援の手を差し伸べているからである。
同日付英
『メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「南シナ海を取り巻く直近の動き」
フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は2週間前、6月12日のフィリピン独立記念日に、南沙(スプラトリー)諸島内のフィリピンが実効支配しているパグアサ島に赴き、フィリピン国旗を掲揚すると宣言していたが、同大統領は先週、その予定を取り止めると発表した。
同大統領が4月12日、サウジアラビアを訪問した際、リヤド在住のフィリピン・コミュニティ向けに語ったもので、余計な軋轢を生むような対応は控えるようにとの中国政府側要請に応えることにしたとコメントした。
一方、4月16日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』:「ドゥテルテ大統領、米比共同軍事演習実施に同意」
ドゥテルテ大統領はこの程、5月に開催されるバリカタン米比共同軍事演習を予定どおり実施することに同意した。
同軍事演習報道官のセレステ・フランク・セゾン少佐が明らかにしたもので、フィリピンを大型台風が襲った場合やテロ攻撃が発生した場合に緊急対応するため、10日間にわたり共同演習を実施すると説明した。
同大統領は就任以来、米軍との共同演習は行わないし、2018年までにはフィリピン駐留外国軍隊を撤収させると発言していたが、今回ドゥテルテ政権下で初の合同軍事演習となる。
また、同日付中国
『環球時報』:「中国海油、南シナ海油田探査で入札発表」
中国最大のオフショア石油・天然ガス生産企業の中国海油(CNOOC)は4月12日、南シナ海北部海域における22の石油・天然ガス埋蔵区域の共同事業について、外国企業向けの入札(2017年9月15日入札期限)を発表した。
中国は現在、世界最大の石油・天然ガス輸入国であるが、外国企業にとって中国向け石油・天然ガス市場は非常に魅力あるものとなっている。しかし、エネルギー資源事業専門家は4月16日、入札対象区域は周辺国と領有権問題となっている場所でもあるため、外国企業側にとって、大きな投資について慎重になるものとみられるとコメントした。
なお、CNOOCは入札発表後の4月14日、上記入札区域とは別の、香港の約100キロメーター南東沖の石油・天然ガス埋蔵区域のプロダクション・シェアリング(注後記)事業について、カナダの石油生産・精製企業のハスキー・エナジーと合意したと発表した。
(注)プロダクション・シェアリング:1960 年代前半からインドネシアにて普及し、その後、開発途上国における石油・天然ガス探査開発契約で採用されるようになった契約方式の一種。外国の石油会社が産油国に対して、必要な資金や資材・技術を提供し、産出された石油や天然ガスを産出国と分け合うことで、投下資金を回収すると同時に利益を確保する方式。
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