ドナルド・トランプ米大統領は、トルコのレジップ・タイイップ・エルドアン大統領と電話会談し、週末の国民投票における勝利を祝福した、とホワイトハウスが声明を発表した。トルコ政府によれば、同国と国境を接するシリア情勢についても話したという。
トランプ氏の複合企業体であるトランプ・オーガナイゼイションは、同国と密接な経済的な関係がある。長女のイヴァンカ・トランプ氏は、2012年にイスタンブールでエルドアン大統領と会った後に、「昨日は私たちとともに、トランプ・タワー・イスタンブールの竣工を祝っていただき、ありがとうございます。」とツイートしている。
トルコの国民投票は政治システムの変更ばかりでなく、1952年以来NATOの一員である同国と、EUとの将来戦略の方向性を見極めるために非常に重要なものであった。...
全部読む
トランプ氏の複合企業体であるトランプ・オーガナイゼイションは、同国と密接な経済的な関係がある。長女のイヴァンカ・トランプ氏は、2012年にイスタンブールでエルドアン大統領と会った後に、「昨日は私たちとともに、トランプ・タワー・イスタンブールの竣工を祝っていただき、ありがとうございます。」とツイートしている。
トルコの国民投票は政治システムの変更ばかりでなく、1952年以来NATOの一員である同国と、EUとの将来戦略の方向性を見極めるために非常に重要なものであった。僅差の勝利ではあったが、51.4%のトルコ人が、トルコの議会システムを大統領の提案どおりに変更し、大統領に強大な権限を与えることに賛成の意思を表明した。ちなみに三大都市、イスタンブール、アンカラ、イズミルではすべて反対が賛成を上回っている。
トランプ大統領の反応は、EU各国の指導者たちのそれとは対照的だ。トルコの反対政党や欧州安全保障協力機構のモニターたちは、一連の不正投票疑惑により、これを無効化するよう求めている。モニターらは公正な環境の下で投票が行われていないとの懸念を表明した。
こうした反対や懸念の主張に対し、米国国務省は有権者の権利を尊重するよう、同国に呼び掛けている。マーク・トナー報道官は、「我々はトルコ政府が全ての市民の基本的権利と自由を保護するよう望む。」と語った。
またオーストラリアでも、ジュリー・ビショップ外相が、エルドアン大統領の勝利宣言の後、トルコ政府に意見の相違を尊重し、憲法の改正などを進めていくよう促している。
トルコでは、反対派が投票の無効化を主張し、賛成派がテレビ・ラジオなどの電波媒体や全国の掲示板等のメディアを占拠して宣伝公報を溢れるほど流した、と批判を強めている。モニターたちは投票が公正な環境の下に行われなかった、不公正な手続の変更により、投票数自体がゆがめられたと言っている。
エルドアン大統領は月曜、国民投票で大統領の権限が強大化したことや、深刻な国家の分断に対する国内外からの批判に対し、「この国は西洋のどの国にも見られなかった最も民主的なやり方で投票を行った。」と憤って反論した。
EUとの関係では、暗雲が立ち込めている。エルドアン大統領はさらに、死刑の復活を検討しており、議会で法案に対する十分な賛成票が得られなければ、再度国民投票を行うと言っている。ただし、死刑の復活はトルコが長年目指してきた、EUへの加盟の条件に反するものである。
ドイツのジグマール・ガブリエル外相は、死刑の復活は「欧州の夢の終わりと同意語」となると述べ、トルコに対し「加盟交渉が行き詰まる」と警告した。エルドアン大統領はEUの加盟自体を疑問視し、これも国民投票で是非を問う可能性を示唆している。
トルコの新政治システムは、2019年の大統領選挙以後に有効となる。それは首相のポストをなくし、すべての行政官僚組織を大統領の下に集約し、エルドアン大統領に閣僚を任命する権限を与えるものである。
閉じる