<貿易収支>
財務省が3月8日に発表した貿易統計によると、1月の貿易収支(輸出総額5兆4,219億円-輸入総額6兆2,753億円)は▼8,534億円と、1年振りの赤字となった。
これまで日本は、1981年以降2010年まで30年間連続で貿易黒字を計上していたが、2011年の東日本大震災の影響で、原発事故に伴う代替燃料としての石油・天然ガス・石炭等の大量輸入を強いられ、▼2兆5,647億円の貿易赤字(輸出総額65兆5,465億円-輸入総額68兆1,112億円)に転落した。...
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<貿易収支>
財務省が3月8日に発表した貿易統計によると、1月の貿易収支(輸出総額5兆4,219億円-輸入総額6兆2,753億円)は▼8,534億円と、1年振りの赤字となった。
これまで日本は、1981年以降2010年まで30年間連続で貿易黒字を計上していたが、2011年の東日本大震災の影響で、原発事故に伴う代替燃料としての石油・天然ガス・石炭等の大量輸入を強いられ、▼2兆5,647億円の貿易赤字(輸出総額65兆5,465億円-輸入総額68兆1,112億円)に転落した。
以降2015年まで5年間、2014年の史上最大▼12兆8,161億円の赤字(輸出総額73兆930億円-輸入総額85兆9,091億円)を含めて、貿易赤字が続いていた(2012:▼6兆9,411億円、2013:▼11兆4,684億円、2015:▼2兆7,916億円)。
そして漸く2016年、6年振りに+3兆9,938億円の貿易黒字(輸出総額70兆358億円-輸入総額66兆420億円)に転じたが、冒頭の単月での赤字は、原油価格が前年同月比4割強値上がりした他、天然ガス・石炭の値上りも影響したものである。
日本の輸入相手国は、中国(全体の約22%)・米国(同約8%)・豪州(同約6%)で、主として原油・石油製品、天然ガス、食料品が輸入品目である。
一方、輸出相手国は、米国(同約19%)・中国(同約18%)・韓国(同約8%)で、自動車・自動車部品、鉄鋼、半導体電子部品が主要輸出品目である。
そして、日本にとって貿易収支で黒字となっている米国からは、トランプ大統領就任以降、貿易不均衡是正を何度となく言及されていたが、ついに3月8日、当の米国が世界貿易機関(WTO)に対して、日本の自動車・農産物の市場開放を求める意見書を提出するに至った。
トランプ大統領は選挙戦中、“米国第一主義”に反するとして、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱とともに、WTOからの脱退も主張していたが、大統領就任後には、そのWTOを利用して、貿易収支是正をはたらきかけようとは、実業家出身の大統領ならではの戦略であろうか。
米国の2016年の貿易収支は、▼7,343億ドル(約84兆4,500億円)の貿易赤字で、データのある世界216ヵ国中最下位であり、形振り構わぬ姿勢を見せざるを得ないのかも知れない(*)。
(*)2015年データであるが、貿易収支1位:中国(+5,930億ドル)、2位:ドイツ(+2,794億ドル)、3位:ロシア(+1,463億ドル)、4位:アラブ首長国連邦(+1,129億ドル)、5位:韓国(+903億ドル)、・・・、206位:日本(▼236億ドル)、・・、216位:米国(▼7,453億ドル)。
なお、米国の貿易赤字を最も計上しているのは、中国の+3,470億ドル(全体の約47%)であるが、中国の攻め方は習近平(シー・チンピン)主席を4月に訪米せしめてからとの戦略なのか、まず、首脳会談を終えている先として、貿易赤字2位の日本(+661億ドル、全体の約9%)から責めようとの算段とみられる(**)。
(**)米国の貿易赤字の3位はドイツであるが、メルケル首相との首脳会談関連は、3月14日付【
風の流れ:ドイツ産業界・トランプ氏に怯える】を参照。
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