米トランプ大統領は、米国土安全保障省で、国境警備員を増員して犯罪者を締め出し米南部、メキシコとの国境沿いに壁を建設する大統領令に署名し、「今日アメリカは国境を取り戻す。米国民の安全を守る」と宣言した。選挙公約を守り国境の壁建設を進めるトランプ大統領の動きにメキシコ政府は反発。メキシコのペニャニエト大統領はトランプ氏と来週会談する予定だったが、会談中止も検討されているといい、両国の溝が深まるのは避けられなくなっている。数日中には壁以外にもイスラム教国からの移民阻止を強化する対策にも乗り出すと報道されている。大統領就任後、切れ者ビジネスマンさながらで急ピッチに公約実行に奔走し、「米国第一主義」を貫いているものの、専門家は「この壁は、メキシコにナショナリズムを起こすだろう。国際関係が後戻りする」と警鐘を鳴らしている。
1月25日付米国
『ニューヨークタイムズ』は「トランプの壁建設指示でメキシコの大統領は訪米中止を検討」との見出しで以下のように報道している。
ドナルド・トランプが「メキシコ移民は強姦者で国外追放する」と宣言した選挙時、メキシコ政府は当選するわけがない者のたわごとだと一喝したが、大統領就任から5日目で、トランプ氏は当時と同じ事を言い、メキシコを憤慨させている。選挙中、メキシコ政府左派からは、メキシコで有名だが嫌われていたトランプ氏の発言を「人権侵害」と人種差別だとして国連に訴えるべきだとの意見があった。...
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1月25日付米国
『ニューヨークタイムズ』は「トランプの壁建設指示でメキシコの大統領は訪米中止を検討」との見出しで以下のように報道している。
ドナルド・トランプが「メキシコ移民は強姦者で国外追放する」と宣言した選挙時、メキシコ政府は当選するわけがない者のたわごとだと一喝したが、大統領就任から5日目で、トランプ氏は当時と同じ事を言い、メキシコを憤慨させている。選挙中、メキシコ政府左派からは、メキシコで有名だが嫌われていたトランプ氏の発言を「人権侵害」と人種差別だとして国連に訴えるべきだとの意見があった。
大統領令にささっとペンを走らせ署名することで、移民送還と国境の壁建設が始動され、選挙中に受けた屈辱は遂に実行された。メキシコ政府によると、ペーニャ・ニエト大統領は大統領令の議会予算承認を待たずしても、ホワイトハウス訪問の予定を破棄しようと検討しているという。長年の両国の貿易、安全、移民に関する良好関係が崩れようとしている。
ツイッター上で政治家や歴史学者は、トランプ氏の行動はメキシコの怒りをかう、大打撃だと批判している。NAFTAの廃止は両国の経済に打撃となり、メキシコは海外投資を控えるようになる。そしてメキシコは国土安全で米国に協力しなくなるだろう。数か月前からは考えられない事であるが、ここ数日間でメキシコ政府内には交渉が難航すればNAFTAから撤退するべきとの意見もあるという。
メキシコという政治が腐敗し法秩序が乱れ経済が低迷する国で政治への期待は無かったが、民意は変化している。「外交関係は常に変化しており、国の決意の象徴としてのこの壁は、メキシコにナショナリズムを起こすだろう。国際関係が後戻りする」と、メキシコ自律技術研究所・国際関係の教授は指摘する。元在米大使は、「壁建設は政治的なもので、実質的に移封移民はなくならないし、両国の関係も変わらないだろう。解決方法を探り続けるしか方法はない。」と述べている。また、ある自営業の30代男性は、「これは政治上の話でメキシコ市民の生活に影響はない。メキシコ人は、相手が高く行けば、トンネルで下を行くさ。」と述べる。
同日付メキシコ
『メキシコニュースデイリー』は「トランプとの会談するな、とペーニャ・ニエト大統領が指示」との見出しで次のように報道している。
米トランプ大統領の壁建設の大統領令署名を受け、メキシコ政府からはペーニャ・ニエト大統領にトランプ氏との会談を中止せよとの要請が多くなっているという。民主革命党アルマンド・リオス上院議員は、トランプの大統領令を「挑発的で敵意ある行動」で会談は中止すべきだと昨夜ツイートした。
英国「ガーディアン」は、建設業者の試算によると壁建設には310億ドル、4万人の人員が必要で5年を要する。皮肉なことに、人件費削減のため、ほとんどの作業員は壁のメキシコ側からとなると報道している。
同日付
『アルジャジーラ』は「トランプがメキシコ国境の壁建設への大統領令に署名」との見出しで次のように報道している。
トランプ大統領は、米国とメキシコの国境に壁を建設し、国土の安全のため不法滞在者を米国市内で阻止し早急に送還するための大統領令に署名をした。署名後、トランプ氏は「両国の治安が改善される。国境のない国は国ではない。今日から米国は国境管理を取り戻す。」と述べた。
一方のメキシコ大統領は、両国を親善から遠ざけ二分する壁建設決定に懸念と非難を示している。
「ロイター」は数日間内にトランプ氏が、シリア、スーダン、ソマリア、イラク、リビア、イエメン等のイスラム教徒多数派の中東国と北アフリカからの難民制限と査証発行阻止に関する不法移民削減対策を打ち出すと報道している。
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