移民問題で揺れ続ける欧州。極右連立政権のデンマークが移民の財産没収の法律を通過させ、人道的観点から移民受け入れに積極的だったスウェーデンが8万人の難民の国外退去を決定した。欧州連合(以下EU)政策の骨子の一つである「域内の人の自由な移動」を保証するシェンゲンが移民問題で危機にさらされてきたが、ここにきて欧州委員会はギリシャ国境における入国管理の怠慢を非難して、最後通牒をつきつけた。
『レゼコー紙』は「欧州委員会が、ギリシャの移民入国管理を厳しく非難」し、「入国の管理統制を取り戻すのに3か月与えられた」事を報じ、「(シェンゲン追放の)ギリシャへの最後通告」と形容する。「レゼコー紙」によると、2015年11月に提出された報告書の結論を27日にEU執行部が採択したが、この報告書は「ギリシャはシェンゲン圏外との国境において義務を著しく怠り、入国手続きにおいて深刻な欠陥がある」と結論付けた。具体的には「移民入国時の指紋登録による身元確認と登録手続きが有効に実施されていない」事などが公式発表された。
「入国手続きの欠陥是正を求める報告書」の採択は、「EU各国の内務大臣が欧州委員会にシェンゲン協定の第26条の適用を求めた」事に応じた結果と「レゼコー紙」は報じる。シェンゲン協定は深刻な機能不全の場合、最長2年入国審査を設ける事を認める。一方でギリシャのモウザラス移民政策担当大臣はこれを「ギリシャで吹聴されている嘘と不快感を表」し、「ベルギーのフランケン移民担当国務長官が“移民を海に押し返せ、溺れても知った事か”と非難したと伝える。
『ルモンド紙』は「ギリシャはシェンゲン圏の飛び地に位置し地中海に面する上に、2015年に100万以上の移民を送り込んだトルコと陸続きで国境を接する」ため、「EUにはギリシャから移民が流入する」。そのため「安定させるのは難しい地理的位置である」事に触れ、また「財政危機でユーロ離脱危機にさらされたギリシャをさらに孤立させる」と懸念する。
また「ルモンド紙」は手続きを詳しく報じる。第一段階で、FRONTEX(欧州対外国境管理協力機関)の調査チームがギリシャとトルコの陸上の国境で評価を行った。「入国手続きおける深刻な欠陥と怠慢」を報告するこの評価は27日に欧州委員会が採択した。次に、欧州理事会がギリシャの著しい怠慢を認めれば、シェンゲン協定の国境規定第19条により、欧州員会が「勧告」を出し、報告書が指摘する全ての欠陥に対する補正措置と行動計画を理事会が採択する。現在は個々の段階である。3か月後に深刻な欠陥が残るなら、EUは理事会の元に特定多数で検証され、修正不十分と判断されたらシェンゲン圏内の一部国境で2年延長の是非を裁定する。
「ルモンド紙」は「この措置の目的」を「5月12日に、ギリシャからの移民流入数が多いままなら、ドイツがオーストリアとの国境で規制を延長できるようになる」事にあると見る。「この規制は既に2015年9月に導入されたが、26条が定める手続きなしで最大8か月間実施できる」がその期限が5月12日という。専門家が「シェンゲンの崩壊」と嘆くように、EU政策の骨子シェンゲンが崖ぷちに立たされている。
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