経済産業省(METI)は10月初め、全国の書店(実店舗)が抱える経営課題についてまとめた報告書をリリースした。この問題について、シンガポールメディアが詳報している。
10月19日付
『ザ・ストレーツ・タイムズ(ST)』紙は、他国と同様に書店(実店舗)の減少に喘ぐ日本における実情について詳報している。
日本では、他国と並んで、全国の書店(実店舗)の減少に遭っている。
全日本雑誌・書籍出版協会(1956年前身設立)によると、日本の書店数は2004年の2万880軒から今年3月の1万918軒へとほぼ半減しているという。
また、日本の1,741市町村のうち約28%が書店を有していない。...
全部読む
10月19日付
『ザ・ストレーツ・タイムズ(ST)』紙は、他国と同様に書店(実店舗)の減少に喘ぐ日本における実情について詳報している。
日本では、他国と並んで、全国の書店(実店舗)の減少に遭っている。
全日本雑誌・書籍出版協会(1956年前身設立)によると、日本の書店数は2004年の2万880軒から今年3月の1万918軒へとほぼ半減しているという。
また、日本の1,741市町村のうち約28%が書店を有していない。
その上で、オンラインストアの書籍売上高が、2013年の約1,600億円から2022年の2,900億円まで倍近く伸びているのに対して、印刷出版物の売上高はピークだった1966年の2兆6,600億円から2023年には1兆6,000億円まで約40%も減少しているという。
かかる状況下、齋藤健経済産業相(65歳、2023~2024年在任)は今年3月、“書店の終焉によって文学的にも文化的にも破綻した国になりかねない”と憂えて、書店の再生を任務とするプロジェクトチームを立ち上げた。
そして同プロジェクトチームが10月4日、全国の書店経営者にヒアリングした上で、書店が抱える経営課題について34項目に取り纏めた報告書を発表した。
METI報告書概略は以下どおり;
●書店が何であるかを知らなかったり、また、新しい本に出会ったりしない若者の増加。
●キャッシュレス決済に対応するため、取引手数料(取引毎に約3%)負担を強いられるが、書籍販売の低収益率によって書店経営を圧迫。
●実店舗の書籍販売では、オンライン小売業者に太刀打ち困難。
●都市部と農村部の格差を縮小することを目的とした政策の下、出版物の販売価格を一律にしたことから、家賃や物流費用等の諸経費を賄うための値上げができず、収益が圧迫されて多くの書店経営者が継続断念。
●年間約7万冊という異常なほど多く出版されることから、各書店の在庫リスク上昇。
●売れ残った出版物の返却が認められるシステムとなっているものの、返品費用は書店持ちのため、物流費上昇で収益を益々圧迫。
●2023年における返品率は、書籍が約33%、雑誌が約47%と過去最高。
●書店経営者からの主な要望は、賃貸補助金やビジネス多様化のための助成金措置、本の購入に対する免税化、更に、オンライン購入の書籍に対する送料無料禁止措置等。
●一方、起業家精神に富んだ書店経営者の中には、敷地内にカフェを併設したり、作家を呼んでサイン会等のイベントを開催したり、また日用雑貨を販売したりと多様な経営努力。
●「シェアードブックショップ」システムで、愛書家や自費出版の著者に書店の一部棚スペースを貸与。
●また、図書館側の地元書店への支援が高まっていて、鳥取県や山形市の図書館は、貸し出しする書籍の購入について地元書店を優先。
●東京郊外の町田市では、地元の書店で図書館の本の貸し出し予約や返却が可能としたことから、書店の客足が増加し売り上げが20%増加。
●コンビニエンスストア大手のローソンは、書店がない市町村の店舗にブックコーナーを導入。
●更に、1877年創業の老舗書店「元野木書店」7代目オーナーの元野木正比古氏(41歳)は、“書店は本を売るだけでなく、別の方法で人が集まる場所にする必要がある”として、カードゲームの導入、中古トラックを使った移動書店、また、書店のない地域向けの書籍自動販売機の開発に注力。
METI報告書に関し、出版する本屋を謳うSPBS(渋谷出版&書店、2007年創業)の福井盛太社長(57歳)は『ST』のインタビューに答えて、“書店は今、顧客を獲得するために「体験的な付加価値」を提供すべきだ”とした。
その上で同社長は、“METIは、補助金を出すだけでなく、業界全体が抱える構造的な問題に対応し、次世代に「人間のアーカイブ(データ群の一体保存)」と言った財産を残すことができる産業の構築に取り組んで欲しい”とコメントしている。
閉じる