多くの貨物船が、紅海におけるイエメンの反政府武装集団フーシ派(1994年活動開始)による商船攻撃を避けるため、紅海を避けてアフリカ南端喜望峰へ迂回している。この結果、長距離航行による貨物船運賃の高騰のみならず、特にコンテナ船(原材料・精密部品・食料品・雑貨等の輸送船)の絶対数不足を補うためにシンガポール等のハブ港での小型貨物船への積み替え頻発によるコンテナ船異常滞留を引き起こしている。
6月26日付
『ロイター通信』は、紅海における商船攻撃を避けての長距離航行に伴い、大型コンテナ船がシンガポール等ハブ港で異常滞留する事態となっていると報じた。
シンガポールを含めたアジアのハブ港で異常滞船が発生している。
海運データ収集・分析のライナーライティカ社(2020年設立)によると、世界中のコンテナ・ターミナルでのコンテナ船の滞船が直近1年半で最悪となっていて、特にアジアのハブ港では、6月中旬現在、全世界の60%ものコンテナ船が異常滞船しており、滞留貨物は240万TEU(20フィート・コンテナ換算個数)余りに及ぶという。...
全部読む
6月26日付
『ロイター通信』は、紅海における商船攻撃を避けての長距離航行に伴い、大型コンテナ船がシンガポール等ハブ港で異常滞留する事態となっていると報じた。
シンガポールを含めたアジアのハブ港で異常滞船が発生している。
海運データ収集・分析のライナーライティカ社(2020年設立)によると、世界中のコンテナ・ターミナルでのコンテナ船の滞船が直近1年半で最悪となっていて、特にアジアのハブ港では、6月中旬現在、全世界の60%ものコンテナ船が異常滞船しており、滞留貨物は240万TEU(20フィート・コンテナ換算個数)余りに及ぶという。
コロナ禍以来の異常滞船であるが、当時の買い控えに伴う貨物滞留ではなく、今回の大きな原因は、イエメンのフーシ派による紅海航行の商船へのミサイル攻撃を避けた多くのコンテナ船がアフリカ南部への長距離迂回航行に伴い、運航スケジュールが大幅に遅延していることと寄港先の減少である。
すなわち、長距離運航に伴う運賃高騰に対処するため、多くの荷主がより大きなコンテナ船での運航とした上で、シンガポール等のハブ港で小型コンテナ船への積み替えを行い、最終目的地まで運搬する方策が取られているからである。
特に、世界第2位のコンテナ・ターミナルを抱えるシンガポールでは、直近数週間で多くのコンテナ船が異常滞船している。
シンガポール海事港湾局(1996年設立)によると、通常のコンテナ船の積揚げ荷役は1日未満であるのに対して、5月末時点でのコンテナ船の滞船日数は2~3日に及ぶという。
ただ、ライナーライティカ社のデータによれば、滞船は1週間にも及んでいるとする。
更に、シンガポールでの滞船を避けた大型コンテナ船がマレーシアのポートクラン(中西端)、タンジュンペラパス港(南端)に回り、そこでも滞船が発生しているばかりか、中国の上海、青島港でも異常滞船に見舞われている。
一方、好景気の北米を中心として年末商戦に備えた貨物大量輸送時期が1ヵ月程早まり、米国におけるコンテナ船運航もより逼迫している。
世界最大規模の全米小売業協会(1911年設立)のジョナサン・ゴールド副会長(2007年就任)は、“米国の消費者は昨年以上に購買意欲が旺盛のため、小売業界は年末商戦に備えて早めにかつ大量に在庫積み上げを図ろうとしている”とする。
よって、ドイツの国際物流大手DHL(1969年設立)アジア太平洋支社のニキ・フランク社長(2023年就任)によると、特に米国向けの貨物運送の時期が早まっているだけでなく貨物量も増加していることから、コロナ禍後のインフレーションと相俟ってコンテナ運賃が5月に入って急上昇しているという。
ロジスティクス関連データ収集・分析のデカルト社によれば、米国コンテナ・ターミナル10港における5月のコンテナ貨物受け入れ量は前月比+12%上昇し、昨年1月以来2番目に多くなっているとする。
かかる背景下、アジアから米国及び欧州向けコンテナ船運賃は2024年初めより3倍となっていて、また、シンガポール等アジアから米国東岸向けコンテナ船運賃は2022年9月以降最大となり、西海岸向けでは2022年8月以降同じく最大となっている。
閉じる