中国は、2010年から世界1の自動車生産国になったが、内燃機関エンジンの時代は外国の自動車のライセンスの下で生産していた。中国政府にとっては、内燃機関エンジンから電気自動車に転換した時期は、戦略的な野望を実現するためのチャンスだと捉えている。すなわち、純中国製の自動車産業を打ち立てることができ、世界市場に文字どおり中国製の車で打って出ることができると考えている。
この野望の実現のため、中国政府としてはあらゆる手段を使っている。...
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中国は、2010年から世界1の自動車生産国になったが、内燃機関エンジンの時代は外国の自動車のライセンスの下で生産していた。中国政府にとっては、内燃機関エンジンから電気自動車に転換した時期は、戦略的な野望を実現するためのチャンスだと捉えている。すなわち、純中国製の自動車産業を打ち立てることができ、世界市場に文字どおり中国製の車で打って出ることができると考えている。
この野望の実現のため、中国政府としてはあらゆる手段を使っている。例えば、財政面や法制面など、電気自動車生産を支える環境の構築に努力した。
とりわけ、電気自動車の主要部品となるバッテリーの生産業者の短期での効率的な育成に注力した。その結果、2023年には中国企業の電気自動車用バッテリー生産量が世界の70%を占めるまでに至った。一方、電気自動車用のインフラとして、中国国内に300万か所から成るバッテリー給電ステーション網を整備した。この給電ステーション数は、世界の電気自動車用公共給電ステーション総数の2/3に相当するという。
なお、中国政府は、国有の電気自動車企業に対し、割り当てた生産量を達成するように強制してきた。一方、外国の自動車企業が、中国側のジョイントベンチャー企業を30年間保護させる政策が、2018年に電気自動車ついてのみ破棄されている。理由は、米国のテスラ社電気自動車が上海に上陸し、中国政府に、市場競争原理に基づく販売を行う圧力が米国からかかったからである。
電気自動車の将来市場は、中国政府の戦略どおりに発展するか?中国の電気自動車の将来戦略は2つの障害にぶつかると想定される。
第1の問題は、過剰生産である。2023年に生産された電気自動車のうち、40%のみが実際に使用されている。
第2の問題は、これまでの電気自動車の輸出先が自国の電気自動車産業を守るため、関税を引き上げようとする動き(米国の場合100%)が出ていることである。
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