ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)は、ウクライナ戦況悪化で国際的にも孤立し、5月9日の対独戦勝記念日軍事パレードも規模を縮小せざるを得ない状況となっている。しかし、専門家分析では、米国主導のロシア産原油禁輸等の対ロシア制裁も、非西側諸国による大幅買い付け増で大した打撃になっていないという。
5月9日付
『ザ・デイリィ・コーラー(DC)』オンラインニュース(2010年設立の右派メディア)は、米国主導のロシア産原油禁輸等の対ロシア制裁も、非西側諸国がロシア産原油を大幅に買い付け増としているため、ロシアにとって大した打撃となっていないとする、専門家の分析について報じている。
米国主導のロシア産原油禁輸等の対ロシア制裁について、『DC』が専門家に取材したところ、非西側諸国によるロシア産原油の大量買い付け、更には、OPEC+(注後記)の自主減産による原油価格上昇も相俟って、ロシアの“戦時下の経済”は瓦解することなく保たれているという。...
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5月9日付
『ザ・デイリィ・コーラー(DC)』オンラインニュース(2010年設立の右派メディア)は、米国主導のロシア産原油禁輸等の対ロシア制裁も、非西側諸国がロシア産原油を大幅に買い付け増としているため、ロシアにとって大した打撃となっていないとする、専門家の分析について報じている。
米国主導のロシア産原油禁輸等の対ロシア制裁について、『DC』が専門家に取材したところ、非西側諸国によるロシア産原油の大量買い付け、更には、OPEC+(注後記)の自主減産による原油価格上昇も相俟って、ロシアの“戦時下の経済”は瓦解することなく保たれているという。
『CNN』報道によると、欧米諸国によるロシア産原油禁輸措置によって生産量が落ち込んでいるものの、非西側諸国、特に中国及びインドがロシア産原油を大量に買い付けており、3月現在の輸入量は1日当たり60万バレル(約9万5,400キロリットル)と最高値となっているとする。
欧米諸国が昨年12月に導入したロシア産原油の上限値(G-7が1バレル当たり60ドルと設定)によって、中国やインドはむしろ市場より安値でロシア産原油を手に入れていることになる。
保守系シンクタンクのハドソン研究所(1961年設立)のネイト・シブリー国際安全保障問題研究員は『DC』のインタビューに答えて、“確かに制裁措置でロシア産原油の輸出収益は落ち込んでいて、今年3月実績は127億ドル(約1兆7,150億円)と昨年同月比▼43%となっているが、それでもプーチン政権にとって「経済的に生存」しうるレベルとなっている”とコメントした。
また同氏は、“欧米諸国の制裁目的が、ウクライナ支援のための団結、かつロシアのウクライナ軍事侵攻の糾弾であるならば、プーチンをして十分驚かせたことは確かであるが、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)が言及したように、ロシア通貨のルーブルを紙屑にすること(ロシア経済を瓦解させること)が目的であったとするなら、明らかに奏功していないと言える”と付言した。
更に同氏は、“対ロシア制裁不参加の国が、買い付けたロシア産原油をロシア以外の原油とブレンドして、非ロシア産原油として西側諸国に転売している”とも強調している。
ロシア産天然ガスについても、『ロイター通信』報道によれば、トルコ経由の天然ガスパイプラインで供給された天然ガスがそのまま欧州に売られていて、今年3月の供給実績は7,560万立方メートルと昨年比+7.5%になっているという。
NPO法人エネルギー研究所(1989年設立)のダン・キッシュ上級研究員は『DC』のインタビューに答えて、“米国は(地球温暖化対策の一環で)再生可能エネルギーに舵を切ろうとしているが、中国は表向きと違って、今や米国を凌ぐ程大量に石油精製をしている”とした上で、“公式な数値に現われなくとも、制裁を掻い潜って、ロシア産原油輸出代金がロシアのところに戻ってきている”と強調している。
また、NPO法人テキサス公共政策研究所(1989年設立)のチャック・デボア主任も『DC』の取材に対して、“4月初め、OPEC+が原油価格上昇を狙って自主減産政策を決断しているが、ロシアは減産に呼応していないため、ロシアにとっては価格上昇という褒美のみを得ることになる”と分析している。
更に同主任は、“米国議員らは制裁強化のみに重きを置き過ぎていて、肝心の制裁対象国がどのようにして制裁掻い潜りをしているかに関心を払っていない”と批判している。
(注)OPEC+:中東・アフリカの産油国であるサウジアラビアやイラン等による石油輸出国機構(OPEC、1960年設立)加盟13ヵ国に、ロシアやメキシコ等非OPEC加盟10ヵ国を加えた新たな枠組み。2016年設立。世界の石油生産量の約4割を占める。
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