異次元の少子化対策を標榜する岸田文雄首相(65歳、2021年就任)は先週、その一環で父親の育児休暇取得率の大幅上昇を掲げ、2030年までには85%まで引き上げるとぶち上げた。しかし、米メディアが、雇用主含めた社会情勢が変革しない限り現実的に達成は無理とする専門家らのコメントを引用して論評している。
3月26日付
『CNNニュース』は、日本政府による父親の育児休暇取得率85%達成目標について、専門家等のコメントを引用して、現実的には無理な話だと論評している。
異次元の少子化対策を標榜する岸田文雄首相は先週、その一環で父親の育児休暇取得率を大幅に上昇させるとし、2025年までに50%、2030年までには85%を達成するとの目標を掲げた。
この背景には、先進国の中で日本の少子高齢化が際立って進んでいることが挙げられ、2022年の出生数は遂に80万人を下回り、1899年統計開始以来最低値を記録し、少子化が益々深刻となっている。...
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3月26日付
『CNNニュース』は、日本政府による父親の育児休暇取得率85%達成目標について、専門家等のコメントを引用して、現実的には無理な話だと論評している。
異次元の少子化対策を標榜する岸田文雄首相は先週、その一環で父親の育児休暇取得率を大幅に上昇させるとし、2025年までに50%、2030年までには85%を達成するとの目標を掲げた。
この背景には、先進国の中で日本の少子高齢化が際立って進んでいることが挙げられ、2022年の出生数は遂に80万人を下回り、1899年統計開始以来最低値を記録し、少子化が益々深刻となっている。
そこで同首相は、“少子化を食い止めるには、今後6、7年の抜本的対策が必須”だとして、先のような目標を掲げた次第である。
しかし、何人かの専門家は、雇用主を含めた社会情勢を変革しない限り、多くの父親が育児休暇を取得することは困難だと批評している。
まず、若者の労働問題解決の活動をしているNPO法人「POSSE(注後記)」の岩橋誠氏は、2021年に制定された育児休業給付制度に基づき、父親は4週間の育児休暇が取得でき、その期間の給与が最大80%まで補填されることになっているが、多くの従業員は、取得によって人事評価がマイナスになったり、責任の伴わない部署に配置転換されることを“恐れて”取得に二の足を踏むとコメントしている。
同氏は、法律では休暇取得に伴う差別的評価を禁じられているものの、特に非正規雇用や有期雇用の従業員は非常に弱い立場にあるとする。
その上で同氏は、“父親の育児休暇取得率を少々上げようが、出生率低下問題を根本的に解決することはできない”と断言している。
また、明治大学(1881年前身設立の私立大)の加藤久和政治経済学部教授(64歳)は、大手企業はここ数年で父親の育児休暇取得容認に積極的になってきているが、“中小企業では、取得に伴う代替人員確保の余裕がないため、若い父親にとって今後とも育児休暇取得に踏み切れる環境とはならない”とコメントしている。
更に、香港科技大学(1991年設立の公立大)公共政策及び社会科学専門のスチュアート・ギーテル=バステン教授は、“父親の育児休暇取得率向上は良い政策であることは疑いないが、現下の日本の社会習慣や情勢を根本的に変えない限り、全体的な改善には結びつかない”と評価している。
なお、『CNN』が今年6月に結婚予定のある男性社員(26歳)にインタビューしたところ、“東京に本社のある大手複合企業で技術系社員として務める自身は、収入は平均より多い方と思うが、それでも資金的に余裕がないため、両親と一緒に住んでいる”とし、結婚を契機に実家を出るが、東京より住宅費が安い横浜に住む意向だという。
その上で同氏は、“子供は2人欲しいが、それ以上は無理だと思う”とした上で、“自身よりも資金的に厳しいカップルは、1人でも子供を持つ余裕がないのではないか”と吐露している。
(注)POSSE:若者自身によって若者の労働問題を解決することを目指して、2007年に設立された特定非営利活動法人(NPO法人)。10代から30代の若者に対してセミナーの開催や労働相談、労働情報の提供等を行い、若者が主体的に社会へ参画していくことに寄与することを目的としている。
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