インドネシアでは、2期目のジョコ・ウィドド大統領(61歳、2014年就任、2024年任期期限)主導で今年11月開催の主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)を成功裏に開催するなど、内外にその実行力を示している。ただ、非同盟主義を標榜する一環からか、反民主主義の徒党である中ロとの関係も重視している。そうした中、中ロ首脳を模するかのように、大統領を侮辱した者に3年の懲役刑を科す等を織り込んだ刑法改定案を制定しようとしている。
12月2日付
『ロイター通信』は、「インドネシア、不倫を罰する条項等を含む刑法改定を策定」と題して、2期目のジョコ・ウィドド大統領の下、大統領侮辱罪や不倫罰則規定等を織り込んだ刑法改定案を制定しようとしていると詳報している。
インドネシア政府高官によれば、インドネシア国民協議会(国会に相当)は今月、不倫処罰規定等を織り込んだ刑法改定案を成立させる意向である。
同改定案には、大統領や政府機関を侮辱した罪や、国の方針に反旗を翻すこと、更には、婚姻前の同棲を禁止する条項まで含まれているという。...
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12月2日付
『ロイター通信』は、「インドネシア、不倫を罰する条項等を含む刑法改定を策定」と題して、2期目のジョコ・ウィドド大統領の下、大統領侮辱罪や不倫罰則規定等を織り込んだ刑法改定案を制定しようとしていると詳報している。
インドネシア政府高官によれば、インドネシア国民協議会(国会に相当)は今月、不倫処罰規定等を織り込んだ刑法改定案を成立させる意向である。
同改定案には、大統領や政府機関を侮辱した罪や、国の方針に反旗を翻すこと、更には、婚姻前の同棲を禁止する条項まで含まれているという。
エドワード・オマール・シャリフ・ヒアリエ司法省副大臣(49歳、2020年就任)が『ロイター通信』に語ったところによると、数十年もかけて準備してきた今回の刑法改定案は、12月15日に国民協議会で承認される見込みだという。
同副大臣は、“本刑法改定案は、インドネシアの現状に照らしたもので、誇りに思っている”とも付言している。
もし本刑法改定案が制定されれば、インドネシア市民に加えて現地滞在の外国人にも適用されるため、外国企業関係者からは、観光地や投資先としての同国の魅力を棄損しかねないとの懸念の声が上がっている。
また、本改定法案は、人口の大半を占める保守的なイスラム教徒から支持を得ているが、反対派は、1998年に独裁者だったスハルト大統領(1921~2008年、1968~1998年在任の第2代大統領、タレントのデビ夫人が第3夫人)から奪還した自由主義に逆行するものだと非難している。
同様の刑法改定案はかつて、2019年9月に国民協議会に提議されたが、このときは市民から一斉に反発する抗議運動が巻き起こり、廃案に追い込まれていた。
市民らは、道徳や発言の自由を制限するもので、自由が奪われるとして猛烈に反対した。
政府当局は、今回提案された改定案については2019草案からの変更点を周知し、数ヵ月にわたり広く全国で意見を聴取した上で作成されたものだと主張しているが、反対派は、些細な変更しか加えられていないと批判している。
『ロイター通信』が11月24日に入手した草案をチェックしたところ、主要点は以下のようになっている。
・死刑:投獄後10年間模範囚であれば、終身刑に減刑。
・不倫:近親者からの被害届があった場合に限って適用され、1年以下の禁固刑。
・大統領侮辱罪:大統領自身からの訴えがあった場合に限って適用され、最長3年の禁固刑。
インドネシア自身が世界最大のイスラム教徒を抱える国であり、この宗教戒律の下、女性・他宗教徒・LGBTの人々が著しく差別されている。
インドネシアは先月、G-20サミットを成功裏に執り行い、国際社会での評判を上げたばかりであるが、特に産業界からは、今回の刑法改定によって国際社会に間違ったメッセージを発信することになると懸念する声が上がっている。
インドネシア経営者協会(APINDO、1952年前身設立、全国1万4千社の会員企業を有する同国最大組織)のシンタ・ウィジャヤ・スカムダニ副会長は、“本刑法改定案は法的不確実性があり、インドネシアに投資しようとしている企業が逡巡しかねないので、産業界にとって全く良い話ではない”と表明した。
同副会長はまた、道徳に関わる規程は、特に観光や接待事業に関わる人たちにとって、“良いどころかむしろ有害となる”とも付言している。
また、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(1978年設立、本部ニューヨーク)インドネシア支部のアンドレアス・ハルソノ代表(2008年就任)も、本刑法改定案は、“インドネシアの民主主義を大きく後退させるもの”だと厳しく指摘している。
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