ロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻して早9ヵ月が経過したが、未だに終結の糸口が見えない。そうした中、ロシア連邦保安庁(FSB、注1後記)から漏洩した機密文書で、ロシアがウクライナ侵攻前の昨夏に、日本を攻撃する計画を立案していたことが明らかになった。
11月24日付
『ニューズウィーク』誌は、「FSB漏洩文書から、ロシアが2021年夏に日本を攻撃する計画を持っていたことが明らかに」と題して、ロシア当局内の内部告発者から提示された情報から、ロシアはウクライナ軍事侵攻を行う半年余り前に日本を攻撃する計画を練っていたことが判明したと報じている。
ロシアのFSBの内部告発者から得た情報によると、ロシアは、ウクライナ軍事侵攻を開始する何ヵ月も前の2021年夏に、日本を攻撃する計画を練っていたという。
反汚職運動を展開する「グラグ・ネット(注2後記)」の人権活動家、ウラジーミル・オセチキン氏(44歳、2015年にフランスに亡命中)が同内部告発者から3月17日付メールで受信したものである。
同内部告発者は、かねてFSB等の腐敗に憤って、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)が手を染めたウクライナ軍事侵攻に関わるFSBの暗躍についてオセチキン氏に度々情報提供をしてきていた。
今回の上記メール含めて、ワシントンDC本拠のNPO団体「ウィンド・オブ・チェンジ・リサーチグループ(WCRG)」イゴール・スシュコ代表が、内部告発者のロシア語表記の発信情報を英訳して『ニューズウィーク』誌に提供したものである。
当該メール文によると、2021年8月にロシアは“日本と局地的な軍事衝突を真剣に検討”していたという。
更に、“両国間で深刻な軍事衝突へ進む恐れがあり、それが戦争へと発展する可能性があったが、何か別の理由で、日本ではなくウクライナとの戦争に変わった”とする。
同内部告発者によると、ロシア側は、政府高官や国営メディアを通じて、日本人は“ナチス”かつ“ファシスト”だと喧伝し始める一方で、電子戦闘ヘリコプターに日本攻撃の準備をさせていたという。
内部告発者によると、具体的にロシア当局が取ったプロパガンダは、2021年8月にFSBが機密解除して、第二次大戦中にソ連市民が日本の特高警察にどれだけひどい拷問を受けたか生々しい描写を公開して、日本を貶めようとしたとする。
また、“ロシア国営メディアは8月8日の報道で、日本は1938年からソ連を攻撃しようと準備していた、と更に言いがかり的な記事を流していた”という。
しかし、“8月16日にはいきなり、日本軍が生物兵器開発のためにソ連軍捕虜を人体実験に使っていた”とした上で、ソ連軍が日本軍を打ち負かしたことで、“ソ連が、日本軍による生物兵器使用による攻撃から世界を救った”とも喧伝し始めた、とする。
なお、両国は、第二次大戦終了後、依然平和条約を締結していない。
この阻害要因が、戦後何十年間も続く“北方領土問題(日本領土とする北方4島をロシアが実効支配)”である。
“敗戦国の日本は、公式な軍隊や対外情報局等を保有することが禁じられているが、北方領土(ロシア呼称はクリル諸島)を取り戻すことで戦後体制を変更できると考えている”とする。
一方、ロシア側は、北方4島は“交渉の切り札”だと捉えているとし、これが、ロシアが日本を攻撃対象として検討していた背景だと考えられる、という。
(注1)FSB:旧ソ連の情報機関・秘密警察であったソ連国家保安委員会(KGB、1954~1991年)の後継とされる組織で、1995年設立。ロシア連邦の犯罪対策を行う。
(注2)グラグ・ネット:ロシアの汚職撲滅や囚人の人権擁護を目的としたプロジェクトで、元実業家で人権擁護者のウラジーミル・オセチキンが2011年に創設・運営。囚人(囚人家族)や元囚人からの救援要請・情報提供を受けるホットライン、また公開のGmailアドレスを持っており、刑務所・拘置施設内での拷問・人権侵害について当局側の職員からも内部告発を受け取っている。またSNSを通じて、発生した人権侵害を広く周知させて、当局が不正行為をした職員の処分に動かざるを得なくなる状況を作っており、頻繁なストリーミング配信では被害者や元職員・人権擁護者などのインタビューを精力的に行っている。
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